そこからはじまる恋もある。

４.Ｆ ページ4

何で、あんなこと言ってしまったんだろうか。


中々俺を見ない当て付け？
避けるように外れていく視線のせい？


どっちにしろ、北山が悪い。
…何もあんなに避けること…ない。


「…ちょっと覗き込んだだけで…、」


Ｋｉ「えっ？」


「…何でもない。」


長い廊下を歩きながら、やっと目的の部屋へと着いた瞬間、北山のきょとんとした顔がこっちを見つめる。


しまった。
心の中、ダダ漏れてた。


素知らぬ顔して、今度はこっちから見合った視線を背ける。


かちゃりと開いた部屋からフワリと清潔な香りが漂う中、思い出した様に、その香りが俺の鼻腔を擽る。


…そういえば、イイ匂いだった。


「…って、俺はヘンタイか。」


中々終わらないチェックインに、痺れを切らして覗き込んだ矢先、


触れた北山の髪の毛が、フワリと風になびく。
瞬間、優しい香りがして、ちょっとだけ、イタズラしたくなって…、


わざと、北山の耳元で囁いた。


香水でもない。
人工的でもない。


ただただ、北山の…
北山自身の香りに、一瞬…、ほだされた。


ぼぉっと物想いにふけっていたら、


Ｋｉ「…藤ヶ谷？そんなとこ突っ立ってないで、早く入れよ。」


北山の怪訝そうな目付きに絡まれる。


必要最小限にまとめた荷物を引きずって、その北山の前を通り過ぎる。


突発的事故も、悪くない。
眼前に広がる壮大な夜景に、心奪われる。


ジッと眺めていたら、頭一個分低い位置の隣から聞こえてくる声。


Ｋｉ「…綺麗だな。お前が好きそう。」


「うん、好き。」


壮大な景色を見つめながら、すんなりとそう応える。


それから何の反応もない北山に、首を傾げてやっと隣に目を向ける。


「…何でそんな真っ赤？」


Ｋｉ「…っうぇ⁈///」


何故かパタパタと自身の顔を扇ぐ北山。
じんわりと染まる頬を見つめて、無意識にその頬を手繰り寄せる。


Ｋｉ「…っな、何っ、///」


「…うん、ちょっと可笑しいなって。」


Ｋｉ「へっ⁈///」


…俺が。


恥ずかしそうに頬を染める北山が…、可愛いとか。


夜景マジック？
一夜マジック？


本当、可笑しい。


…何で、こう…どきどきするかな。


ただの仕事仲間なのに。
ただのメンバーなのに。


ただの、北山なのに。


まるで、恋してるみたいに、
ドキドキするとか。


俺、可笑しい。


手繰り寄せた頬を静かに離して、バスルームを指差す。


「…先にシャワー浴びなよ。」


とりあえず、北山の側にいたくない。
そう感じた。

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