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ひっくい声が出た。
歴史遡行軍相手でもここまで低い声は出したことが無い。少し前に大倶利伽羅に残しておいた高級プリンを食べられた時以来の声である。ちなみにその時の大倶利伽羅は若干顔を青くしながら、燭台切光忠と歌仙兼定、堀川国広がコラボして持ちうるすべての技術と知識を使って作った極上のプリンを献上していた。鶴丸の機嫌は言うまでもなく治った。
それはそうとして、どう言う事だ、それ。
目をかっぴろげながら、隣に居た猫耳の少女に問いかける。
「…まんまだ。あの蛇神は、Aさんを孕ませようとしている。」
「なぜそれを政府が許す？というか今までの定期検査もそれをやっていたのか？」
「… Aさんの念力の代償だよ。Aさんが政府に拉致られた時、偶々、政府に協力的な蛇神、あのAさんが見ている蛇神だね、それが居たんだ。それだけなら良かったんだけど、何故かその蛇神がAさんをものすごく気に入ってしまったらしくて…あの能力を彼女に宿らせたんだ、孕み袋になる代償として。」
完全に諦めている顔つきで、猫耳の少女が話した。
近侍であろう御手杵が、少女の肩に手を置き、慰めている。
それでも鶴丸はその怒りに歪んだ表情を崩さず、依然声は低いまま。
まあ、そうなるのは仕方が無い。最初で恐らく最後になるであろう、唯一の主が孕み袋になっていると言われたんだ。無理もないだろう。おそらく他の刀剣がこの現場を見つけた時、このようになるであろう。刀によっては迷いなく、政府に殴り込みに行く者も居たと思う。今回の近侍が鶴丸で良かったとも言える。
「…その事を主は知っているのか？」
「…いや、知らないと思う。」
「…主は自分が知らないままいつのまにか孕んでいたのかもしれないという事か？」
「そう、なるね。」
気まずそうに目を逸らす少女は、でも、と声を上げた。
「でも、政府だって対策はしている。蛇と人間の体の構造はもちろん違う。だから、第三者が介入しない限りAさんが孕む確率も限りなく低い。」
「…蛇神が口を挟んでくるかも知れないだろう。」
「政府は蛇神と、Aさんを孕ませる行為に及ぶときは、必ず人間の知識がない蛇を使うことと、その行為に蛇神は口出しをしない契約をしている。」
「…そう、か。」
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作者名：味噌田楽 | 作成日時：2021年5月23日 22時
