悪魔の囁き②【魔入間】 (ページ20)

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６３話ページ20

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「あはっ！入間ちと金きらくーん！」
「いっ、入間様……っ！」
「良かったぁ……」

　金剪の長の背中に乗りやって来た入間くんとサブノックくん。2人とも少し怪我をしているようだが、何はともあれ無事に生きて帰って来てくれた事を嬉しく思う。

「入間様！」
「入間ち！」

　2人が長の背中から下りると、アスモデウスくんとウァラクさんはすぐさま入間くんの元へ駆け寄る。そんな2人の後を追って、私も入間くんの元へ向かった。

「入間くん…、」
「あ、Aさ＿＿」
「入間くんの馬鹿！」
「……え？」

　帰って来て早々、突然の罵声に驚き目を見開く入間くん。

「もう、心配したんだよ！ただでさえ危ないって言うのに、中継には映らないし、いつまで経っても帰って来ないしで、こっちはずーっと気が気じゃなかったんだから！！カルエゴくんに至っては気が短いから、すぐ亡き者にしようとしちゃうし、本当に大変だったんだからね！」
「オイ」
「えっと、その…ご心配とご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんでした……」

　彼が人間だと言う事を忘れてレースに参加させた此方にも非はあるが、今回ばかりは本当に肝が冷えた。必死に訴える私の剣幕に、入間くんは素直に謝罪をする。

「……おい、入間。一つ言っておくが、此奴はレース中わんわん泣きながら、終始ずっと貴様の心配をしていた」
「え……」
「なっ、泣いてないもん！半べそだったもん！」
「うるさい。殆ど泣いてたようなものだろう」

　唐突にレース中の私の様子をカルエゴくんに暴露され、焦って否定をする。泣きそうだったというだけで、断じて泣いてはいなかったので語弊がある。

「あ、あの……」
「だからもう、あまり此奴に余計な心配は掛けさせるな。俺はAの泣き顔はあまり好きでは無いのでな。こう何度も泣かれては敵わん」
「うぅ…本当に良かったよぉ……」
「……！」

　一安心し、思わずポロポロと涙が溢れてきてしまう。

「あっ、そんな、泣かないで下さいAさん！本当にすみませんでしたっ……」
「こっちこそごめ……っ」
「全く、やはり泣き虫は昔から変わらんな。1人で抱え込まれるよりはマシだが」
「泣き虫じゃない！カルエゴくんの馬鹿っ！」

　泣き出した私を見て、入間くんは狼狽え始め、カルエゴくんには泣き虫だと揶揄される。私の泣き虫がそうなら、カルエゴくんの意地悪な所も昔から相変わらずだと、口には出さずに密かに心の中で思う。

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