琥珀色の実体 ページ6
しゃん、しゃん、しゃん、と足音と同時に耳許できーんと響く高音が痛い。
ふと遠くを見遣れば、どことなく神聖な空気を巻く大きな赤い鳥居の前に誰かが立って手招きしているのが見えた。
「やぁ、珍しいお客様だね？」
卯月遥サン。
――そう言って三日月と同じように口の端を吊り上げて笑う
兎に角どれをとっても恐ろしいまでに美しく、完成しきっていて、その蜂蜜色の目で見つめられると、何だか居心地悪い気分になる。
「こん、にちは」
……なんというか、怖そうだ。
こう言う霧のような気儘な不思議さを滲ませて、『読めない』印象を醸している――不思議ちゃんの猫をかぶった奴が実は一番怖いのだと、過去の経験上アタシは知っている。
「……えっと、まぁ取り敢えず……何でそんな弱いフリしてるんですか?」
誰ですか、とか、もっと大事なことがあるだろうに、そう問いを投げかけたアタシに、男は不思議そうには? と一言言った。
首を傾げ、口許に長い人差し指を当てる動作は何処か演技めいていて、それでいて似合っている。
「……アタシ、昔から魔力が『見える』んです」
貴方はそうだな、底知れない大量な、しかも上質な魔力を持っているのにも関わらず、それを封印してる気がして。
「驚いたな、当たりだよ。実は僕、神なんだ」
――?????
はてな、疑問符、クエスチョンマーク、まぁ何でも良いけど、兎に角そんな奴が頭の中でポンポン増殖していく。
カミ？かみ……
漢字の表記は神の方ですよね……うん。今の話の流れで紙な訳無いし……
「幾らアタシが馬鹿だって流石にそれはないんじゃ」
結果辿り着いたのが面白くとも何とも無いただのジョーク、って結果。
ああそうだ、もしかしたらそれとも何か怪しい宗教の勧誘かもしれない。最近新しく出来た仏教の宗派の勧誘が凄いって聞くし。
「ホントホント。何なら見せてあげるよ、神のチカラってーや、つ☆」
それは余りに突然で、呪文の詠唱も魔方陣も用いなかった。
えい、と何とも気の抜ける声を出して、ぱんっと手を叩くと、彼の体がふわんと空に浮かぶ。
二対の甘い色の目を潤ませ、ぽとりと大粒の涙を落とすと、涙はすぐに
それらが落ちる前に集まり出したかと思えば、急に眩いばかりに光り輝き。
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西夏(プロフ) - 綺麗な文ですね！ (2018年8月11日 13時) (
レス) id: 66c6e8cd96 (このIDを非表示/違反報告)
ましら(プロフ) - やはり、うたちゃんの文章は、日本の匠に作られたとても繊細で、太陽の淡い光を受けて佇んでいる硝子ｻﾞ細工が如く美しいよ。うたちゃんの文章をありがとう！ (2017年1月30日 16時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
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