鬼、笑う ページ28
その声に、口調に嫌なほど耳に馴染んで体の至るところからどっと汗が流れていく
鍔迫合いを続ける刀が掌に滲む汗により滑り落ちるくらいのべたべたと濡れた感触が酷く鬱陶しい
「老いることなく、多くの者の死を見届けるのはどんな気分か是非聞いてみたいものだ」
『っ……!』
がきん、金属が鳴ると二人の距離は開いていく
暗いものを弾き後ろへと飛び退いたAとは対称的に鬼の顔は悠然と笑顔さえも称える
じろりと睨むように目を細め鬼へと切っ先を向けるAを嗤っているようだ
『……噂に聞く新月の鬼、どすか』
「新月…!へえ、君たちからはそう呼ばれているのかあ。風流ある呼び名をもらったんもんだ」
名のとおり、新月の如く見つけることのできない鬼がいると古くから口伝により伝わってきた名前
上弦に匹敵するほどの力を持ち、その鬼に逢えば生き延びたものは一人を除いていないとも聞いた
あくまでもくだらない戯言だろうと相手にしない鬼狩りが多い中、Aだけはその存在を冗談などと笑い飛ばさなかった
実際、目の前にいるのだから
「それにしても、随分速い登場だ。おかげで今日はまだ数える程度しか喰ろうてない」
『最近日の本で騒がせる首なし事件はあんさんのことで間違いありまへんな?』
「そうだね。だって人の頭って美味しいからつい食べてしまうんだ!特にあの脳味噌に齧り付いたあの感触なんか＿」
堪らないと頬を染める興奮した鬼の首が一瞬にして撥ねられる
遠慮も、慈悲すら与えられぬ一閃は目にも留まらぬ
「いやぁ、たまげた!」
＿が、首を撥ねられたにも鬼は愉快滑稽と声をあげるものだからAの目元は険しくなる一方だ
(首を斬ったはず……?なぜ)
ちらり、転がったものを横目に確認すれば地面に捨てられているのは暗い何かだ
「まさか俺の首を撥ねるとは…影で身代わりを作らねば殺されていたところだ」
『影……なるほどお。あんさんの血気術どすか』
厄介なものだと再び下ろした刀を構え踏み込んだ途端、森全体から人と、そして大量の鬼の気配が突然現れたのだ
思わず目を見開くAに鬼はくつくつと喉を震わせた
「気づいたかい?この山にはおよそ何十もの人間が迷い込み、鬼たちが神隠しをしようと躍起になっているのさ」
ぎらり、刃に灯る鋭さに似た瞳に鬼はやはり余裕綽々な様子で愉しげに近くの赤い木の実を口に含んでいた
赤い汁がぽたり、地面に滴り落ちて行く様が非常に憎い
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 126人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (
レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑 | 作成日時：2019年5月6日 10時
