首なし ページ27
陽の光はゆっくりと、確りと傾きつつある時計の針は二つを指す昼時
活気溢れた街道を抜けて草木を掻き分け進むAの顔は険しい
白い装束に枝やら葉が引っ掛かるのも厭わず周囲の状況を確認する
それらしき死体は、見当たらない
(もう少し奥か)
遮光の役割を担う背丈の高い木々の集まった地帯へと警戒を怠らず地を踏みつける
Aの、というよりは他の警備地区にも隣接するこの森は人呼んで神隠し森と呼ばれていた
近くの町では森に入った人間は二度と帰ってくることがないと恐れられる森は鬼にとって丁度良い住処なのだ
冨岡と合流したこの森は木々が日光を阻むので恐怖を抱かずとも鬼たちは昼を過ごせるからである
(ここ最近は首なしが多く転がっとりましたが…頭を好む鬼が潜伏しとるんか、それとも)
ばしゃり、川を渡る際に跳ねた水飛沫に近場で泳いでいた魚が驚き逃げていく
しかし、あろうことか魚たちは暫くすると上流から下流へと戻ってくる
『……?』
目についたからには自然と足はそちらへと行くもので、緩い川の上流を目指す
昇るにつれ、鉄臭い血腥さい匂いが花の匂いと入り交じる
当たりだ。川の側に鎮座する岩に引っかかったような首なし遺体が重なっていた
『……はよう斬らななりまへんな』
あまりに惨い数々の遺体に日輪刀を握る手の力が強くなっていく
一先ず、遺体の状態を確認しようと岩の側へ寄ろうとしてからそれは聞こえた
「きゃあああああああああああ!!」
断末魔、いや悲鳴の類いだろうか。女人の甲高い叫びに声の聞こえた方角へ走り出す
形振り構っていられないようだと焦燥感を抱きつつ足場の悪い獣道を行く
だが妙におかしい。一抹の違和感が拭えぬまま森を駆け抜け開けた場所にたどり着いた
声をあげた女はそこにいた。鮮やかな藤色の前で頭部と胴が切り離された状態で
_刹那音もなく鞘から引き抜いた刀身が鬼の首に届くより前に、暗い何かにより阻まれ甲高い金属音が鳴く
「おやあ。鬼狩りさんが現れてしまったか」
心地よい低音がこの場を支配したみたいだ。この男は危険だと第六感が警鐘を鳴らす
強い力で鍔迫合いをする最中、藤色の髪を揺らし鬼が笑った
「久しいのう。出雲の阿国よ」
深淵から這い出た禍々しさに嫌な汗が女の背中を流れ落ちる
対する鬼はさも愉悦と微笑を気味が悪いほどに深めていたのだ
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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時