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時には強引に ページ23

数珠を擦り涙を流す悲鳴嶼に臆することなく堂々と正面から立ち話を続けるAの二人の長話が休戦を迎えられたのは冨岡が通りかかったおかげである


「呑気に立ち話とは、随分なことだ」


それは二人に対しての皮肉か。彼の存在に気がついた当人らは会話を中断し冨岡を振り返る
その表情から上記の冨岡に嫌悪の念を抱いてはいない

『冨岡はんが帰ってきはりまった…かなり時間を使ってしまいましたな悲鳴嶼はん』

「うむ…そのようだ」

『声をかけてくれておおきに、冨岡はん。おかげさんで彼を一日中独占しいひんで済んだ』

悲鳴嶼は悲鳴嶼で産屋敷に呼ばれ屋敷を訪れていたようで、このまま二人が立ち話を続けていれば最悪日を跨ぐことになっていただろう

素直に感謝を伝えるAに倣い悲鳴嶼からも礼を述べられ冨岡は静かに頷く

彼が二人に声をかけたのは純粋に自分と違い立ち話に興じられるほど余裕があるのだという理由故だったが感謝されるとは

内心驚愕している冨岡を他所に悲鳴嶼は女に一声またと告げ去っていった

これ以上此処に滞在しても意味はないと冨岡がAの横を通り抜けようとして、羽織の裾がぐいっと引かれた

『ちょいと待ちんさい』

「………」

何だと言いたげに眉を寄せた冨岡とは対称的にAの表情は晴れやかだ

『再会できたのも何かの縁。ここは一つ、親交を深めるええ機会や思いまへんか?』

「断る」

『冷たいお人やなあー…あ、やましいことは何もしまへんよ。ただ、昼餉でもどうかと』

「…俺に構うな。時間の無駄だろう」

一向に折れる気配の無い彼にAは辟易としながらも諦めるつもりはない
しかし、こうも拒絶されれば彼女も嫌われているのではと要らぬ心配をしてしまう

(そうは言っても、こちらとしても困るんやけどなあ)

多少なりとも強引に話を進めるべきかと、判断するや彼女は冨岡の羽織から手を離すと男特有の骨ばった手を握った

「………!」

人とは思えぬほどの冷たさに冨岡の肩が跳ね目の前のAを凝視した
冷えた指先だけでなく、いきなり手を握ってきた行動にも若干驚いているのだろう

『構うなと言われれば構いたくなるのがうちなんで』

一体その細腕からどれほどの力が出されるのか、力の限りに冨岡を引っ張り走り出す彼女に仮にも主の屋敷だぞと咎める暇もない

繋がった指先からじわじわと温もりが伝染していく
それはまるで凍った心を溶かす前兆にも思えた

昼餉→←他に通ずるは信仰か



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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