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昼餉 ページ24

街に溢れかえる人の合間を器用に縫って先へ先へと男の手を引く女の姿に民は目を惹かれる
見目麗しゅう美男美女の逢引には例え知らぬ者とは言えど、その目的地に多少は興味を持ってしまうのが人の性

好奇の視線を掻い潜り街道から外れた道の先には活気溢れる表通りとは打って変わり静けさ漂う細道

迷うことなくAが辿り着いたのは一見何処にでもある閉店している食事処

『お邪魔します〜』

「な……!」

『うわっ、』

躊躇なく戸を開けると暖簾を潜った女に驚愕しつつも連れられる
準備中と札が下げていたのが見えていなかったのかと咄嗟に今度は冨岡が手を引く

その力の強さに転びそうになるものの足で踏ん張り阻止する
いきなりの行動に振り返れば仏頂面が一番に映る

『どないしました?』

「開店前に訪ねるのは悪いだろう」

『開店……嗚呼、札のことどすか?』

「ありゃ客を寄せ付けない為の偽物さ。お兄さんよ」

薄暗い店内の奥から気配もなく聞こえた声に反射的に勢いよく冨岡が振り向けば店主と思わしき男が一人、影から現れた

年齢は二人よりも一回り年老いている中年の男性だが、体から滲み出る立ち振舞いから只者ではないのは違いない

「偽物……」

「うちは特定の客しか入店できない店が客を選ぶ店でな。ああやって一般客を寄せ付けないようにしとるんだ」

『説明は後でええやろう?店主はん、昼餉を』

「仕方ないやつだな…」

再び店の奥へと下がって行った男の様子からしてみてもAは彼と交流があるようだ
現に、勝手に厨房近くに位置する椅子に座った

入口とは違い意外に陽の光が窓から漏れているおかげで薄暗さは感じられない

『此処はうちが贔屓にしとる食堂どす。表では』

「表?」

『裏では鬼の情報収集のために利用しとる…さながら情報屋、って所でっしゃろか』

「うちはあんたら鬼殺隊みたいな非公認組織の連中が情報を交換するための場を提供してるのさ」

おまちどうさんと机に配膳されたのは料理はどれも手の込んだ品々
交流の場を貸しているだけならここまで手を加えなくともと思うがそんな思考はある一品が目の前に置かれ飛んでいく

艶を出す大根に浸透した出汁の香りは甘いようで鼻腔を擽る
鮭は視認しただけでも分かるが程好い柔らかさでその身を解されるのを待つ

『………』

「お兄さん、仏頂面以外の顔できたんだな…」

鮭大根を前に頬笑む冨岡にAが絶句しているのを横目に店主は苦笑いを浮かべていた

本題→←時には強引に



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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