嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ10)

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演劇の時間ページ10

本校舎の体育館で行われる演劇発表会
二学期の最後を締め括る行事を終えればいよいよ残すは冬休み

皆暗殺の準備を怠りたくないけど、演劇発表会も手抜きにはしたくない。良い心がけだと思う

「天宮、あんた脚本の補佐しなさいよ」

監督は三村くん、脚本は狭間さん。各々が役を振り分けられる中、狭間さんがあっけらかんと私を指名してきた

『補佐?私でいいの』

「語彙力なら他に引けとらないでしょ。それにあんた演技下手だし」

遠慮のない正論にうっと喉を詰まらす
ええ、確かに演技できないけど…まあ狭間さんの補佐は嫌じゃないし良いか

早速物語の構想を記す狭間さんのノートを盗み見てから眉を寄せた
おいおい、これはかなり……

『……わあ。ある意味本校舎の人を瞠目させそうな話だ』

「どうせならアイツ等にも楽しんでもらいたいから」

不吉な笑みを称える狭間さんにその楽しんでもらいたいは違う意味だろうなと思う

けど狭間さんが表に出てくるなんて珍しいし、普段なら止めに入るけど今日は乗っかっていこうかなあ

『良いね。これならもっと重いハートフルストーリーの方が受けがいいかも』

「言うじゃない。それならまずは話の枠組みだけど…」

●●●

殺せんせーを主役とした桃太郎の台本に皆は目を通していく内に顔が死んでいく

後半なんか全員葬式みたいな雰囲気を醸し出す傍ら、狭間さんだけは不気味に口角を上げている

『重すぎたかな』

「いや、初端からクライマックスというか…」

「俺このじいさんの役やるのか……」

財産に目が眩みおばあさんに縁を切られるおじいさん役の杉野くんはげんなりとしている
…無理もないな

「けど本校舎の生徒に一泡吹かせられそうな脚本なんだよな」

「俺は面白いと思うけど」

本校舎の奴等を興奮の渦に叩き込む目的はどこへやら、一泡吹かせる目的へと変わりつつある台本に三村くんは逆に好感だ

監督がああ言ったならば、脚本の変更はない
それを見越していた狭間さんが更に笑みを深めるものだから止めれば良かったと少し後悔した