嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ41)

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彼女の時間・五時間目ページ41

ばらばらと崩れていき原型を失ったそれに昂っていた気持ちが一気に冷えていく感覚に陥った

何が起きたのか見ていた筈なのに、頭が追いつかなかった。いや、正気ではなかったからそれも嘘になってしまうのかもしれない

気がついた時にはカルマくんの超体育着を掴み、拳を振り上げていた

『どうして、どうして‼︎』

「………」

感情のまま殴ろうとして、拳が震えたまま動かない。本当は罵倒して、詰って許さないつもりだったのに

『どうして……』

母さんと私を繋ぐ唯一のモノを壊され、それでも黙ったまま私を見つめるカルマくんを殴ることができない

できるわけがない。超体育着に残る何かが掠れた跡や顎下が赤くなっていることから彼がどれほど私を正気に戻そうと奮闘したのが目に見えてわかる

もちろん、彼だけじゃない。こちらの様子を伺っている皆だって私なんかの為に必死になってくれていたのだろう

『…ごめん、ごめんね』

カルマくんに私から詰られる選択をさせたことも、皆んなを傷つけたことも、今まで嘘を吐き続けていたこと

その全てを謝罪する為に吐いた声は小さくて、震えてしまっていた

「Aちゃん!」

みっともなく大粒の涙を流し鼻を啜っていれば不意にどんと体に何かがぶつかる。驚いてそちらを見やれば有希子ちゃんが瞳を潤ませて私を抱きしめていた

『有希子ちゃん……』

「無事で…良かった。本当に良かった……」

存在を確かめるように強く抱きしめてくれる彼女にまたじわりと視界が滲む。私は彼らを殺すつもりだったのに、そんな優しくされては困ってしまう

確かな温もりと優しさに触れて、堰を切ったように涙がこぼれ落ちていった

『あ……ああ、ううっ……ごめん、ごめんね…っ‼︎』

「天宮……」

「ほらほら、美人な顔が台無しだよ」

子供みたいに泣き喚く私に愛美ちゃんが有希子ちゃんごと抱きしめてきたり、中村さんに頬を引っ張られたり、揉みくちゃにされる

いつの間にか周りはE組の皆に囲まれて、一人ではないことに気付かされる
誰一人として私を責め立てる人がいないのを良いことに私はわんわん泣いた

「天宮さん」

どれほど泣いていたか、涙も枯れかけたところで瀕死の殺せんせーが私の頭を撫でながら諭すような柔らかい声音で声をかける

「今度こそ、話せそうですか?」

『………はい』

思考と気持ちを落ち着かせる為に一度目蓋を下ろす。もうどうすれば良いのかわからない今、私にできることは昔を語ることだけだ