嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ34)

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彼女の時間・四時間目ページ34

ただただ迷路のような道を駆け抜けて後ろを気にかけ、そうやって繰り返しているともう逃げ道はないと追い詰められた行き止まり

「どどどうしましょう行き止まりです」

「…っ、駄目だ。片岡たちとも連絡がとれない!」

「チッ。こうなりゃあ迎え撃つしかねえだろ!!」

蠢く溶解生物を前に寺坂くんと吉田くんが皆の盾たらんと双璧をかう
以前使用したスタンガンは効果があるのか、そもそも彼らに電気は通用するのか

続々と通路を埋めて迫ってきた生物を前に微かに足が震えてしまうのはどうしようもない。誤魔化すように隣で震える奥田さんを抱く

「神崎さんは俺の後ろにいてくれ」

「杉野くん、」

それらを看破したのか、目の前には大きな背中が生まれていて不甲斐なさと申し訳なさがごちゃ混ぜになって襲いかかる

守られてばかりいた。杉野くんだけではない、Aちゃんにも。だから、あの子は弱みを曝け出せなかった。自分が守る立場だったから

今思えばわかる。どうして彼女は何も語らなかったのか

「来るぞ!!」

「吉田、外すんじゃねえぞ……!」

ぱん、スタンガンがその体に触れる前に触手が勢いよく伸びてくると躊躇なく二人の腕を叩いた

突然の衝撃に驚いた二人と生物を阻むようにどこからか一人の少年が現れ此方に背を向けている

「残念ながら電気はこいつらにとって通用しない。殺すには同族をぶつけないと」

「テメ……っ!」

その背中に生やした触手を唸らせ見えた横顔は血を垂らした口元の笑みを映えるほど白く、そして何よりもAちゃんと似ていた

寺坂くんのみならずここにいる皆が息を呑んだのも無理はなく、そこに彼女がいる錯覚に陥ったから

「ぼさっとしてる暇があるなら逃げるなり行動を起こさないと死ぬぞ」

唖然としている私たちの目の前で容赦なく軟体生物を打ちのめす姿にはっとして間もなく、背後の壁が扉のように開く

隠し扉の類い。全員で顔を見合せ一度だけ後ろを振り返る
少年は笑って先を促してくれた

「Aを頼むぜ。あいつにはお前たちが必要だからさ」

この先に何が待ち受けるのか、定かではなかったけど。助けてくれた少年が止めなかったのだから、悪いことは起きないのだと

そう思って私たちは足を進めた