嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ27)

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彼女の時間・三時間目ページ27

人気もない山道を登り律の指示に従い右へ左へと草木を掻き分けるとその建物は見つかった
白を基調とした外壁に正方形の形。一目見ただけでは少し大きめの倉庫と違わない

扉を開け中へと入ると物と物の隙間に隠された地下への道を見つけ全員で頷く
先生を筆頭に下へ降りていくと彼は佇んでいた

「貴方が藤ノ木弔さん…ですね?」

立っているだけなのに烏間先生とは違う威圧感に体が竦む
蛇に睨まれた蛙のように萎縮する僕たちは他所に先生だけを見つめる男はやがて自分の背後へ向く

硝子越しの部屋の中、椅子に拘束された天宮さんが居た

「…ここまで辿り着くとは。流石は死神」

「天宮さんの体を解放してください」

「自ら死地へと飛び込むか。あれは貴様が創造しているよりも邪悪だぞ」

「それでも私の生徒に変わりはありません」

呆れたような嘲笑しているようなどちらにしても冷たい目で先生を見ると勝手にしろと言わんばかりに扉が開いた

全員で行こうと足を向けると先生の触手が僕らを制す

「安全が確認できるまでは皆さんは待機していてください」

「殺せんせー…、」

有無を言わせぬまま先生が部屋へ入るのを固唾を呑んで見守る

「…天宮さん」

青い痣や切られた痕は痛々しくて目蓋を上げる気配のない彼女に先生がそっと手首を拘束していた縄を解く

刹那、上から降りてきた梯子が音をたてて落ちてきた

「なっ…」

出口が無くなったと全員が気を取られた途端、振動に伴い爆発音が殺せんせーのいた部屋で鳴り響いた

「殺せんせー!」

硝子の向こうでは先生の溶けた顔が冷や汗を浮かべて俯いた天宮さんと対峙している

咄嗟に前原君が扉に手をかけるも動く試しがない
完璧に出入口を封鎖された

「くそっ、おいここ開けろよ!」

「………」

「てめえ!」

寺坂君の声が聞こえていないのか無表情で中の様子を見つめる藤ノ木に腹が立った寺坂君が拳を叩きこもうとして、止めた

いや、止めさせられたと言うべきだろうか

背後から漂う並々ならぬ殺気に僕たちは体が動かない
指の一本から、爪先まで、何から何まで

「やれ」

動かない僕らを視界に捉えず部屋を去っていく男に瞬きですらできない
震えが止まらない。それほどの覇気は

「御意」

仲間であった彼女からの初めての敵意であった