嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ22)

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彼女の時間・二時間目ページ22

一体なぜ天宮さんがこの男性について調べていたのかと疑問に思う空気の中、烏間先生だけは携帯の画面に釘付けになっている

如何なる状況でも眉一つ動かさぬあの先生が動揺により驚愕しているのだ

「烏間先生、この人のこと知ってるの?」

「…ああ。俺の師範でもあった人だ」

「か、烏間先生の師匠!?」

「軍を抜けてからその知能の高さを見込まれて学者になったと聞いていたが……何故彼が」

屈強な見た目な上に頭脳明晰ときてみればまるで殺せんせーを思わせる
その当人は暫し考え込んでいる素振りだ

「Aちゃん、そのお偉いさんに誘拐されたんだろーね大方」

「いくらなんでも安直過ぎるだろ。それに、そうだとしたら天宮は事前から自分が狙われてる事に気づいてたって訳になるじゃねえか」

「へえ。馬鹿の癖に分かってるじゃん」

寺坂君を罵る罵倒も切れが悪い
それくらいカルマ君だって焦ってるんだ

「ちょ、ちょっと待ってカルマ君。今の言い方からしたら天宮さんは…」

「気づいてたよ。もう俺たちに会えなくなるって」

あまりにあっけらかんと言い放つものだから質問した僕がおかしいのかと自分を疑ってしまう

でもカルマ君の一言に驚いているのは当然ながら僕だけではなかった

開いた口が塞がらない。愕然とした空気を厭わないようにカルマ君が続ける

「昨日、Aちゃんが窓から俺の家尋ねてきたんだ。その時、様子がおかしかったから薄々気づいてたんじゃないの」

「窓から……」

「まあ…天宮らしい…」

「でも、それならどうして助けを求めてくれなかったんでしょう…」

少し落ちた声音に神崎さんが奥田さんの肩をそっと触れる
頼られない歯痒さは前から経験してるからその気持ちは分かってしまう

修学旅行といい、夏休みといい、死神との対敵といい、彼女が誰も頼らない姿勢には困ったものだ

「いつもの誰にも迷惑をかけたくない精神からか…それとも、話せない事情があったのか」

「恐らくそのどちらもでしょう」

黙止を続けていた殺せんせーに一斉に振り返る
流石は先生。伊達に生徒を見てきた眼故に確信を持っている

「一先ず、天宮さんに関しては先生に任せて皆さんは自宅で待機していてください」

「なっ……!!」

これから何が起こるのか、それが危険な事だってこと

僕たちに危険な目に遭ってほしくない一心の指示に分かっていても反発してしまうのは僕たちがまだ子供だから