さようならの時間 ページ20
夜も更け街中はクリスマスだと謳い馬鹿みたいに騒ぐ輩により賑わいが齎される
その様子を甚だ不快だと言いたげに窓の外へと視線を投げる男が溜め息を吐いた
「なぁにがクリスマスだ。こちとら命かかってるって状況なのに」
『……2号』
「分かってるって。オレ達が異常なだけだろ?はあ、これだからやだやだ」
ベッドに寝たきりとは思えぬ陽気な彼だが、雰囲気に削ぐ和ぬ細い手首に彼がもう長くないことは明確だった
ぐっと唇を噛み締めてその手を包み体温を分けるように、祈りを込める
男が何処か嬉しそうに口許を緩めた気がした
「いよいよ明日か……結局、残ったのはオレとお前か」
『…………』
「なぁに。誰もお前を恨んだりなんてしていないさ。みんな、最後はお前に介錯してもらえてるんだ…それだけで報われてる」
握られた反対の手で頬に触れる冷たい手が気持ちよくてずっとこうしていたかった
でも、それは叶わないんだってずっと前から知っている
血の繋がりはなくても私達は家族だ。そこに嘘偽りはない
『私は、報われてなんていない』
家族を手にかけたのはこれで何人目になるのか、数えるだけでも反吐が出る
もう体は限界で、唯一支えとなっていた心も悲鳴をあげていた
いつ壊れてもおかしくない。精神はとっくに異常をきたしている
次に怪物となるのは私だ
「……すまねえな。お前にばっかり負担をかけちまって」
『…もういい、今日は寝て』
掛け布団をきちんと首まで掛けさせて目蓋を閉じさせる
そっと握っていた手を離しベッドを離れると不意に名前を呼ばれた
「お前が幸せになれれば、オレ達はこの人生に意味を成せたんだって思えるんだよ」
『…幸せになんてなれやしないよ』
「なれるさ。お前には、仲間がいるんだろ?」
天宮Aには仲間がいるけれど、彼らは私の仲間ではない
生きる世界が違うのだ。当然だ
『………チビたちを頼む』
返答に答える事はなく、再び歩きだした私の背後で馬鹿だなあと呟く声には聞こえないフリを決め込んだ
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なな - めっちゃすきです!(;ᴗ;)更新まってます!! (2022年8月19日 16時) (レス) @page42 id: 3ea5956e3b (このIDを非表示/違反報告)
2k?(プロフ) - 大好きです!!!!! (2022年8月9日 23時) (レス) @page42 id: 086cbb7ccc (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの駄作者(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。続き楽しみにしています (2021年5月3日 8時) (レス) id: a3e16989e8 (このIDを非表示/違反報告)
mrsk11(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年5月1日 14時) (レス) id: 7abb019b27 (このIDを非表示/違反報告)
琉渚 - 更新楽しみにしてました!!ありがとうございます!! (2020年4月8日 1時) (レス) id: 98b9c9a2d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 16時