Q ページ9
「太宰さんとAの新しいお友達、ずいぶん壊れやすいんだね」
口の端を伝う血を手の甲で拭っていると列車の出入口に凭れながら笑顔を浮かべる久作の声に伏せた顔を上げる
「けど良いんだ。太宰さんを壊す楽しみが残ってるし、Aとはもっと遊びたいもん」
「それはおめでとう。けれどAと遊ぶ許可を出した覚えはない、諦め給え」
背中を向けられ表情こそ見えないが太宰さんの声音は地を這うほど低く、殺気を包み隠すどころか容赦なく久作に向けられている
対する彼はつまらなさそうに唇を尖らせている様子
「太宰さんはぼくがAと遊ぶのを何時も邪魔するよね。…いいよ、勝手に遊ぶから」
『………久作』
「ぼくはねA、またきみが遊んでくれるなら許すよ。ぼくを閉じ込めたことも、置いていったことも」
久作が何故ここまで私に執着するのか、それは彼の面倒を一時的に見ていたからだろう
当時の私は他と比べて歳も近かったことからそれなりに親しみを持たれていたのは覚えている
だが、私は彼を裏切った上に彼を置いてマフィアを抜けた。彼にとってはどれほどの絶望を与えたのか、想像の範疇でしか知り得ない
未だ震える敦くんの背を撫で乍、唇を結ぶ。答えることは出来ない
黙ったままの私に久作は笑みを消した、と思えば再び張りつけた笑みを太宰さんに送る
「太宰さんにはぼくを閉じ込めたお礼にいっぱい苦しめて壊してあげるね」
「善く覚えているよ。君ひとり封印する為に大勢死んだ
けど次は封印などしない。心臓を刳り貫く」
物騒な言葉通りの殺し文句。動じない久作はやっぱり不気味に感じてしまうのは無理もない
どろどろの闇夜に似た瞳の中の星は交互に私と太宰さんを眺め、唯愉快だと云いたげな顔
「ふふふ。また遊ぼうね太宰さん、A!」
やがて時刻が迫ると汽笛が鳴り響き久作を乗せ列車は動き出す
とんだ悪夢を見たような気分だ。目覚めの悪い、誰からも忌み嫌われる
「……行こう、敦君。A……は立てるかい?」
『…問題、なさそうです』
胃の底から沸き上がる感覚も無ければ骨が軋む痛覚もない
再生能力が元に戻ったのか変わりはない
すっと立ち上がった私の側の敦くんは逆に顔を手で隠して地面に蹲っている
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蜜柑(プロフ) - かりんとうさん» コメントありがとうございます〜1から読んでもらって書いた本人としても嬉しい限りです…!更新は不定期ですが出来る限り尽力していきたいと思います。これからもよろしければ応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 1から読みました。本当に面白くて面白くて、読み進める手が止まりませんでした笑こんなに素敵な作品があったとは……!これからも更新楽しみにしています!!頑張ってください! (2019年5月6日 12時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - イエさん» コメントありがとうございます…何故だか完結したことになっておりますが続けていきたいと作者本人は思っております…!更新は今停滞気味ですがこれを機に更新していきたいと思います〜… (2019年5月5日 8時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
イエ - お、終わり?面白かったのに…頑張って更新してください!お願いします! (2019年4月29日 23時) (レス) id: e962cbea86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年1月5日 14時