或る爆弾 ページ20
近くにあった新聞紙を丸めてメガホン代りに代用すれば準備万端
敦くんが爆弾魔(谷崎くん)に接触を計る
「ぼほ、僕はさ騒ぎをき聞きつけた一般市民ですっ!いい、生きてれば好いことあるよ!」
「誰だか知らないが無責任に云うな!みんな死ねば良いンだ!」
「ぼ、僕なんか孤児で家族も友達も居なくて、この前その院さえ追い出されて行くあても伝手もないんだよ!」
「え………いや、それは」
あまりの敦くんの必死さに流石に谷崎くんも演技を忘れて困惑している。というか引いてる
(敦くん演技上手いなあ……あ、いやあれは彼の本心か)
あまりの出来に太宰さんもにこやかに様子を見守っているようだ
「ね、だから爆弾捨てて一緒に仕事探そう」
最早必死さを越えて狂気すらも感じる彼の説得に谷崎くんも危険を感じ取ったらしく完全に演技を止めた
その隙をついて私は物陰から即座に人質の近くにあるデスクへと身を移す
太宰さんが国木田さんに指示を出すと同時に私にもハンドサインを送ってきた
(了解……っと)
「手帳の頁を消費うから、ムダ撃ちは厭なんだがな……!」
『一発で決めてくださいよ国木田さん……っ』
デスクに置いてあった国木田さんのペンを手に持ち主の元へとペンを送る
「独歩吟客」
手帳の頁にペンを走らせ一枚だけ破り取れば紙片は別のものへと変形する
手帳から鉄線銃へ、これが国木田さんの異能力独歩吟客
「A!!」
『待ってました…!』
国木田さんが鉄線銃で爆弾のリモコンを回収するのと同じタイミングでデスクから飛び出し縛られた人質を保護してまたその場を離れる
人質と共に安全な場所へ避難したのを太宰さんが横目で確認してくる
私が静かに首を縦に振れば彼も頷いて国木田さんに指示を飛ばした
「確保っ!」
デスクを飛び越えて国木田さんが谷崎くんに駆け寄りその顔に一発蹴りをお見舞いした
容赦がなかったので…なんというか
『うわあ…痛そう』
「兄様大丈夫でしょうか…国木田さんも手加減をなされていませんでしたし……」
『……あの程度の怪我なら大丈夫大丈夫。それじゃあナオミちゃん、よろしく』
ナオミちゃんを縛っていた縄をナイフで切ると彼女にマネキンの腕を手渡す
残念なことにこれからが敦くんの入社試験は本番なのだ。残念なことに
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2018年7月7日 17時