進むために ページ37
キッチンの棚の下にあった脱出口を開け、その先を進んでいくと出口が見えた
もう炎の暑さを感じることもない
「ふっ…。やっと外に…」
森に出た途端、コウが地面に伏してしまった
慌てて生死を確認してみたところただ気を失っているだけ
中の空気を吸い込み過ぎたんだろう
(外に出た途端倒れるなんて…よっぽど生への執着がすごいこと)
苦笑いを浮かべていると私の横で銃を手に取るリンタロウ
コウの持っていた拳銃だ
(今ならコウを殺すにはいい機会だけれども…)
私に彼を止める権利はない。これからは彼自身が考えていかなければならないから
銃口をコウに向け彼はじゃあね、と別れを切り出す
その時、大きな爆発が発生し建物が崩壊した
大きな爆発だ。これは報道機関が黙っていない事態になりそうだ
ちらり、何気なく彼を盗み見してみるとリンタロウは自分の腕を凝視していた
そこには赤いリボンが彼の腕に止まっている
(あれは…)
間違える筈がない。あれは、ミサキさんのリボンだ
その証拠にリンタロウはぶつぶつと呟いた末、銃を下ろした
その呟きからは所々姉さんと言っていた
「僕はもう…前に進むんだ…」
新村コウに今度こそ別れを告げてリンタロウは私に体を向ける
「Aちゃん」
『ん、…なに?』
拳銃を捨てたリンタロウの顔が何処か清々しいのは過去への想いを断ち切ったからか
うん。こっちの顔のほうが今までよりもずっと大好きだ
「僕を…僕たちを助けてくれて、ありがとう」
『…またその話?もうお礼は結構だよ』
「最後まで聞いて」
茶化すように笑って見せればリンタロウの真剣な目が返ってくる
だから私は空気を壊さないために口を閉ざした
「あの時、キミにこの命を助けられた。…でも、それだけじゃない。僕も姉さんもキミという存在がいたから今まで生きてこられた」
まるで私を崇めるような言葉はむず痒いけど黙っていよう
「みんなが僕らを苦しめる中、キミだけは僕らに普通に接してくれた。僕らをまた救ってくれた」
ふわり、柔らかい風が頬を撫でた
「ありがとう。僕はそんなキミが好きだった」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 465人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても面白かったです！今後とも応援しています！頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年6月13日 10時) (
レス) @page46 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶 - 面白かったです！蜜柑さんの作品が１番好きです！これからも頑張ってください！ (2020年3月10日 20時) (レス) id: 203f8de236 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - カルビさん» コメントありがとうございます〜!こ、コツですか……具体的にどのようなコツでしょうか? (2020年2月4日 22時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ - お話読みましたが凄いです。なにかコツとかあれば教えてください、 (2020年1月30日 14時) (レス) id: 9d5eab3caf (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 涼花凛娘さん» ありがとうございます！金曜日か土曜日あたりに作成できたらいいなと思っているので良かったら是非…！ (2018年7月4日 22時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑 | 作成日時：2018年4月26日 21時
