雨 ページ5
近藤と沖田を大阪の松本良順先生の元に護送した日から１３日。
旧幕府軍と薩長軍との間で戦いの火蓋が落とされた。
世に言う戊辰戦争の第一戦『鳥羽・伏見の戦い』である。
旧幕府軍１万５千人に対し、薩長軍５千人。
数の上では優勢にみえたが、最新設備を投与した薩長軍を前に完全に圧倒されていた。
ザーザーと音を立てて激しく雨の降る日の事だった。
伏見奉行所に陣を置く新選組の元に、ずぶぬれになったAが戻って来た。
駆け抜けてきたのか僅かに頬を上気させ、水を含んだ着物を絞っている。
土方「戻ったか。
戦況はどうだった？」
貴女「トシさん、その前に手拭い頂戴。」
ブルっと二の腕をさすりながら彼は土方を睨み付けた。
流石に冬の雨の下を走り抜けた身体は冷え切り、手先の感覚はなくなっている程だった。
労いの言葉もない土方の隣を横切り、
千鶴「『鬼殺し』さん、大丈夫ですか！？」
千鶴は慌てて彼に手拭いを渡した。
貴女「ありがとう、千鶴ちゃん。
君はどこかの鬼副長とは違って優しいね。」
嫌味を含めた口調と視線を土方に送り、Aは千鶴から手拭いを受け取った。
土方「うるせぇ。
さっさと報告しやがれってんだ。」
ムッと顔を顰めた土方は負けじと睨み返し彼を促した。
髪を拭きながら、
貴女「もう隊を引き上げた方がいい。」
と、瞳を伏せながら呟いた。
貴女「地形的にも敵が高台にいるし、射程距離も敵の方がいい。
このまま攻め込めば無駄に隊士が死ぬよ。
それに、ここには京助さんもいない。
攻め込んでも利益がないし、消耗するだけの戦だね。」
土方「・・・。」
更に顔を顰めた土方を見て、彼は最後に言葉を付け足した。
貴女「まぁ、僕の仕事は京助さんの動向と千鶴ちゃんの護衛だからね。
参考程度に聞いておいて。」
『でも』と、彼は更に言葉を紡ぐ。
貴女「雨の日は千里眼が良く利くんだ。
水が反響しあって、普段よりも遠くのものが視える。
いつもは視えないものも視える時がある。」
そこで土方は何かを悟ったらしい。
千鶴に聞こえない位置に移動すると、彼の耳元で、
土方「何が視えた？」
と、問うた。
Aは注意深く千鶴の動きを確認しながら、
貴女「確信はないけど・・」
土方「話せ。」
貴女「雪村鋼道が視えた。」
土方「！？」
土方の背筋に戦慄が走った。
案ずるように千鶴へ視線を注ぎ、そしてAに戻す。
この戦には羅刹が関わって来ている事を、土方は深く理解してしまったのだ。
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岬鬼(プロフ) - iwaさん＞お久しぶりです！戻って参りました。 少しずつですが、完結できるよう更新していきます。安定しない活動になるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします！ (2020年10月23日 19時) (
レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - お帰りなさい。これからも無理しないでくださいね。 (2020年10月21日 21時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - kirinさん» kirinさん＞はじめまして！閲覧、コメントありがとうございます！以前から読んでいただけていたなんて、とても嬉しいです！これからも長く更新できない時期があったり、安定しない活動になるかもしれませんが、完結まで頑張って参ります！よろしくお願いします！ (2020年8月11日 16時) (レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
kirin(プロフ) - はじめまして、初コメ失礼します。以前から読ませて頂いていまして、何度も読み返していたので更新再開されたとのことでとても嬉しいです！陰ながら応援しております！ (2020年8月11日 4時) (レス) id: dce83ecbd9 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - iwaさん» iwaさん>ありがとうございます！なかなか安定した更新は難しいですが、努力していきます！気長にのんびり待っていてくださると嬉しいです！今後ともよろしくお願いします！ (2020年7月8日 23時) (レス) id: 17ab3ad94f (このIDを非表示/違反報告)
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