大きな不安 ページ30
貴女「誰かいるの？」
Aは奥の部屋に向けて声を上げた。
こんな場所にいるのだ。捕らわれている可能性が高い。
？？「・・っ。」
僅かに空気が揺らいだ。相手が迷っている事が窺える。
あちらも図りかねているのだろう。
互いがどのような立場でどのような目的の者なのか。
千里眼で確認しようにも、曖昧な能力は相手を映し出す事をしなかった。
蜘蛛の糸を掴むように、微かな気配と相手が意識を向けた事を頼りにしてAは千里眼を相手へ向け続けた。
？？「・・・あなたは？」
貴女「！！」
そして返ってきた声。
貴女「僕は傭兵をやっている者だよ。
不幸にも雪村綱道の研究とやらのために捕まってしまってね。」
口早に相手へ返答した。
相手が声を出してくれたおかげで千里眼は安定し、やっと相手の姿を確認する事が出来る。
だが、その姿を見て彼はスッと息を飲んだ。
その人物は医療用のベッドに横たわっていた。
手足、腰回りは拘束されており、手首に刺さった鍼灸針から管が伸びて、綱道が持っていた小ぶりの壺と同じ柄の壺へ繋がっていた。
血の匂いはここからしていたのだろう。
？？「それは不幸だね。
今に死んだほうがマシだと思うかも知れないよ。」
苦し気な声が返ってきた。
少々高めの声だが、その若い声の主が男か女かまではわからなかった。
やせ細った体はいつからここにいるのかと問いたくなるぐらいである。
？？「研究対象って事はあなたも人じゃないの？」
貴女「え？」
驚くべき質問が返ってきた。
『あなたも』という事は、相手も異形の者なのだろうか。
驚愕しつつも、彼はその質問に答える。
貴女「少し変わった体質なんだ。君は？」
？？「私も似たようなもの。」
相手は少し微笑んだのだろう、僅かに空気が緩んだ。
声も歳も若く感じるが、疲弊し細い体はまるで子供の様にも見えた。
？？「あなたとは色々と話したいのだけど、今日はもう・・」
そう言われてハッとした。
この細く小さな体を綱道は研究という大義名分で弄んでいるのだろう。
呻き交じりの疲弊した声は、もうすでに意識を手放そうとしている。
貴女「大丈夫なの？」
その質問は返ってこなかった。
相手の声が聞こえなくなると突然不安が襲ってきた。
狡猾な男の研究対象にされており、その手中にいるという果てしない不安が・・
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岬鬼(プロフ) - iwaさん＞お久しぶりです！戻って参りました。 少しずつですが、完結できるよう更新していきます。安定しない活動になるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします！ (2020年10月23日 19時) (
レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - お帰りなさい。これからも無理しないでくださいね。 (2020年10月21日 21時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - kirinさん» kirinさん＞はじめまして！閲覧、コメントありがとうございます！以前から読んでいただけていたなんて、とても嬉しいです！これからも長く更新できない時期があったり、安定しない活動になるかもしれませんが、完結まで頑張って参ります！よろしくお願いします！ (2020年8月11日 16時) (レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
kirin(プロフ) - はじめまして、初コメ失礼します。以前から読ませて頂いていまして、何度も読み返していたので更新再開されたとのことでとても嬉しいです！陰ながら応援しております！ (2020年8月11日 4時) (レス) id: dce83ecbd9 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - iwaさん» iwaさん>ありがとうございます！なかなか安定した更新は難しいですが、努力していきます！気長にのんびり待っていてくださると嬉しいです！今後ともよろしくお願いします！ (2020年7月8日 23時) (レス) id: 17ab3ad94f (このIDを非表示/違反報告)
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