別離 ページ23
貴女「・・・」
暖かい腕の中でAは目を覚ました。
鳥の声も聞こえぬ冬の朝に、ただ耳元から聞こえる寝息だけを聞き彼の胸に慈愛が広がった。
沖田を起こさぬよう、彼の腕からすり抜けて僅かに社の戸を開ける。
貴女「あ・・」
そこから見えた景色にAは感嘆の声を上げた。
見渡す限りの銀世界。
真っ白の雪が全てを飲み込んでいた。
はぁ、っと息を吐くと、それは泡沫に空に吸い込まれてゆく。
美しい現だ。
沖田「ぅ・・、ん？」
背後から聞こえた声にAは振り向く。
貴女「ごめん、寒かった？」
目をこすりながら起き上がる沖田を見て、彼は申し訳なさそうに声をかける。
沖田は、その質問に応えず、立ち上がると彼の隣に移動した。
沖田「雪、積もったんだね。」
貴女「そうみたい。」
会話の間をすり抜ける2人の白い息は混じり合い、そして消えていった。
暫く2人は動かなかったが、先に声を上げたのはAだった。
貴女「そろそろ行かないとね。」
僅かに下がった声のトーンに、
沖田「本当は行ってほしくないのに。」
と、本音をはいた。
Aは振り向いて沖田を見つけると、その唇に己の唇を合わす。
貴女「僕も同じ気持ちだよ。」
深い黒の明眸を見ながら、沖田は彼の顎に手を添えた。
沖田「ズルいんだから。」
貴女「総司君もね。」
再び唇を重ね深く口付けると、沖田は名残惜しそうにAを解放した。
貴女「1人で帰れる？寄り道しない？」
沖田「子供じゃないんだから。」
貴女「だって君は安静にしてないんだもん。」
沖田「Aがまた会いにきてくれるって約束してくれるなら安静にしてるよ。」
貴女「約束するまでもないでしょう？」
沖田「そうだね。」
2人は1歩離れると社を後にした。
そして神社の鳥居をくぐり、長い階段を降りると沖田は松本良順先生のもとへ。
Aは偵察のために別の道をいった。
・
・
離れなければならないもどかしさにAは1度振り向いた。
今ここで全てを投げうって沖田のもとに走って行けるならば、どれほど喜ばしいことか。
だが、それは到底できることではない。
京助の事も、鬼の事も、そしてこの戦の事も・・
全てが終わる日まで、あの背中を追ってはならないとAは己に言い聞かせるのだった。
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岬鬼(プロフ) - iwaさん＞お久しぶりです！戻って参りました。 少しずつですが、完結できるよう更新していきます。安定しない活動になるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします！ (2020年10月23日 19時) (
レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - お帰りなさい。これからも無理しないでくださいね。 (2020年10月21日 21時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - kirinさん» kirinさん＞はじめまして！閲覧、コメントありがとうございます！以前から読んでいただけていたなんて、とても嬉しいです！これからも長く更新できない時期があったり、安定しない活動になるかもしれませんが、完結まで頑張って参ります！よろしくお願いします！ (2020年8月11日 16時) (レス) id: 2999d52a99 (このIDを非表示/違反報告)
kirin(プロフ) - はじめまして、初コメ失礼します。以前から読ませて頂いていまして、何度も読み返していたので更新再開されたとのことでとても嬉しいです！陰ながら応援しております！ (2020年8月11日 4時) (レス) id: dce83ecbd9 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - iwaさん» iwaさん>ありがとうございます！なかなか安定した更新は難しいですが、努力していきます！気長にのんびり待っていてくださると嬉しいです！今後ともよろしくお願いします！ (2020年7月8日 23時) (レス) id: 17ab3ad94f (このIDを非表示/違反報告)
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