84 モブを演じる主人公 ページ10
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「お、Aじゃねぇか」
『え、あっ夜久さん!』
ビブスを回収し、洗濯機に突っ込みにいこうとしていたら、たまたまトイレから出てきたらしい夜久さんに声をかけられた。
振り向くと夜久さんは一人のようで、片手を軽くあげて「よ、」と挨拶をしてくれた。
私も黒尾を通じ、夜久さんとは意外と長い付き合いでお世話になっているので、頭を下げて返した。
『なんか、話すのは久しぶりな感じしますね』
「まぁ、近くにいても、俺たちは二人で話せる機会すら滅多にないもんな」
『……なんか恋人みたいですね…』
「はァ!?ッ、ばっか、おま…!」
少しだけ顔を赤くして、「ふざけんなよ…!」とそっぽを向く夜久さん天使。
本当に可愛い。身長も低めだし。
そう言ったら蹴られることを知ってる賢い私は何も言わないけど。
『でもそんなに嫌がらなくても』
「ちげーよ、お前を好きなやつに誤解されても困るだろーが」
『、………』
……私を、好きなやつ。
その言葉に、普段なら『夜久さんって意外に酷いジョーク言うんですね…』とすかさず泣き真似をして見せるんだけど、思わず言葉に詰まった。
それでも、それを悟られないように、すぐにいつもの私を演じなおす。
『好きなやつって、周りの奴らの私への態度からして好意なんて微塵も感じられませんわ。夜久さん、それを分かっててそんなことを…』
とあからさまな嘘泣きをしながら、今までされてきた嫌がらせと暴言をつらつらと語った。
我ながら素晴らしい演技。
まるで本当にいつもの私だ。
……いや、これが本当に、本来の私なんだ。
私がそんなことを考えているなんて知らないであろう夜久さんは、呆れたようにため息をついた。
「……なんつーか、スガくんの言ってた事が分かったわ」
『?菅原さんですか?』
「ああ。素直になれない兵士達と、マイナス思考のお姫様だってよ」
『??仁花ちゃんはマイナス思考でも可愛いからいいんですよ』
「なんでそうなるんだよ。そっちのマネージャーの話なんかしてねぇよ」
『え、お姫様って言ったら仁花ちゃんじゃないですか?潔子さんはどちらかというと女神ですし』
「……前言撤回、鈍感でクソめんどくさい通行人Kな」
『そんな超モブ必要あります?』
「お前だよ」
『えっ』
……ああ、そうか。
それが私の作った舞台か。
でも、だったら少し違う。
私はそんな、鈍感じゃない。
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マニ。(プロフ) - 未確認歩行物体さん» ✉️。この作品もとても面白いです!これからも応援してます! (11月22日 14時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 私、占いツクールで布教活動をしているのですが、この作品のシリーズ、とても好きなので布教してもよろしいでしょうか? (2022年3月24日 22時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - mooさん» はじめまして!わーい、たくさん褒めて頂きとても嬉しいです(*´∀`*)こちらこそコメントありがとうございました!( ´ ▽ ` )/ (2021年8月9日 10時) (レス) id: a04ea61aea (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 初めまして、モテ期到来からの各ルートとオマケまで読めて最高でした!ありがとうございます!! (2021年7月7日 16時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - きゃーぽんさん» きゃーぽんさん、コメントありがとうございます!完結してから4年経った今でも、この作品を見つけて読んでくださった方がいる事がとても嬉しいですヽ(;▽;)ノお褒めの言葉まで頂き、本当にありがとうございます!! (2021年5月18日 22時) (レス) id: d428059590 (このIDを非表示/違反報告)
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