72 平和の隙間から漏れてくる ページ41
・
「………」
『………』
鍵を返したあと。
いつも自分から話を広げてくれる黒尾と、元々自分からネタを出したりしない上、最低限の受け答えしかしない私。
そんな私達は、黒尾が黙っているせいで会話を交わすことなく廊下を戻っていた。きつ。なんか喋れ。
「……なあ」
『ん？』
「お前、俺と付き合わねぇ？」
『んん？？』
前言撤回。やっぱり喋らなくていい。
藪から棒にもほどがある。でも、私は歩く足を止めないし、黒尾も変わらず私の隣を歩いていた。
『冗談？』
「けっこー本気」
『理由は？』
「俺なら、お前の理想を一番分かってやれんじゃねーかなって」
組んだ腕を頭の後ろに回して、天井を見ながら歩く黒尾。見慣れた、いつも通りの黒尾だ。
なのにその言葉で、急に私の前に現れたかのような心境になった。
『私の理想、どんなんだと思ってんの？』
「簡単に言ったら平和じゃねーの」
『はは、まあ外れてはいない』
黒尾は本当にすごい。コイツは私を認めているかはどうであれ、理解してくれている。黒尾の言う通り、今の私を一番知っていて、一番近い存在は黒尾だ。
『……確かに私は、精神的にも肉体的にも平和が好きだけどさ』
だからこそ。
『黒尾は鋭いから、遠慮しとく』
へらりと笑ってみせる。
黒尾はちらりと私を見て、んーと唸った。
「もうちょっと分かりやすく言ってくんね？」
『私は黒尾が嫌いだ、って？』
「それはうそ」
だろ？と目配せしてくる黒尾に、自惚れも大概にしろと足を蹴ろうとしたら避けられた。いやマジで。
「つか俺そんだけでフられたの？マジで？？」
『なんかごめん』
「まあでも別に諦めねーけど」
『ヤメテ』
黒尾は白々しく笑った。
私がそう答えるのも分かっていたくせに。
私だって薄々勘づいていた。こんな形で来るとは思わなかったけど、黒尾が私のことを気にかけてくれているのは知っていた。
ただちょっと、思った以上で。
だって黒尾、できるだけ私が困らない言い方をしてくれた。答えるまで逃げれない空気にしておいて、結局最後は私が逃げれるようにした。
どうやったって、この人は私を最優先にしてくれているのだと。それが目的だとしたら敵わない。
『黒尾ずるいわぁ』
「それはお前だろ。お前が顔そんなにしなかったら、諦めようと思ってたのにな？」
『は？別に赤くないでしょ』
「赤いなんて言ってねーけど？」
『………』
・
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未確認歩行物体(プロフ) - たくさんのコメントありがとうございます！！数年もたった今更にまとめての返信になってしまいすみません、全てのコメントは当時にちゃんと読ませて貰ってました…！完結してから随分経ってしまいましたが、新しくコメントくださった方もありがとうございます！ (2021年5月3日 13時) (
レス) id: d428059590 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - もうこの小説作ってくれた作者様に、感謝だわ。 ありがとうございます!(スライディング土下座) (2020年6月6日 18時) (レス) id: 8baac5d0e6 (このIDを非表示/違反報告)
リンネ - なんかひいおばあちゃんずるい。クロと誕生日同じだよ?!ぼくなんか8／20というなんという日にちだよ。あと1日早く生まれたかった＼(^o^)／ (2016年12月17日 17時) (レス) id: ef4590e231 (このIDを非表示/違反報告)
やよい - それから未確認さん、今までありがとうございました！未確認さんへの作品を作ったのでぜひ見てください。http://uranai.nosv.org/u.php/enq/mikakuninn/ (2015年11月2日 18時) (レス) id: e5350613f4 (このIDを非表示/違反報告)
やよい - 実は、未確認さんへのメッセージを書いた作品を作りました。これを見ている読者の方はぜひ、参加していただきたいです！ (2015年11月2日 18時) (レス) id: e5350613f4 (このIDを非表示/違反報告)
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