120 (レイザー視点) ページ31
▽
一度島外から現れた女が、今度はちゃんと "入口" からゲームに参戦したらしい。また会うことは予想の範囲内だったが、あの日共にいた男は一緒ではないようだ。この島に何の目的があるのかは知らないが、また随分と手練を横に連れている。
ーー奇妙な奴だ。特別鍛えられてもいない身体は服の上からでも分かる。その挙動はまさに普通の人間。片手で殺せそうなほどに脆く、この女に強さというものは何一つ感じられない。
ただ、纏っているオーラが恐ろしい程に深く滑らか。これほどまでに洗練された念をみるのは、俺にこの島を託した…あの男以来だ。コイツは一体何者だ…?
耳に入ってくるプレイヤーチームの会話からすると、彼女はこのイベントへの参加は不本意な様子。他数人も数合わせで連れてこられたような奴らがいるが…、周りの実力者の彼女に対する扱いだけは明らかに違う。ぞんざいに扱われているが、他の数合わせのプレイヤーへの無関心とは程遠い、強い関心と信頼。
俺の提案したドッジボールのメンバーとして、キルアという少年に引きずられるようにコートにはいった女。俺の投げるボールに顔を青くしたまま隅っこで棒立ちする彼女は、円こそは展開しているものの、いつでも倒せそうな程に無防備だった。
ーーはずなのに、今。
俺がゴンに投げたボールの威力を奇妙な能力で半減させ、俺が女へと投げたボールすらも、今は彼女の手に中に。
「…は、」
信じられない光景だった。俺がボールを投げたと同時に、女が円の範囲を広げ、片足を強く踏み鳴らした。瞬間、体育館の床がひび割れ、地震のような揺れと地響きが轟いた。爆発音にも似た大きな音と土煙が止んだ後、その光景に誰もが目を見張る。何も無かったはずのフローリングから、土や木、岩が混ざった土砂の壁のようなものが彼女を守るようにそびえ立っていた。
残響の中、沈黙を破るように天井の照明が落ち、音が響き渡る。ここは…体育館だぞ?
やりすぎた、と。いかにもそんな風に顔を青くした彼女が指先をくるりと回すと、ぐわりと時空が歪み、割れた窓が元に戻り、床を突き破った土砂でできた壁がまるで動画を逆再生したかのように戻って、何事も無かったように元通りの体育館。先程まで壁にめり込んでいたボールが、壁が消えたことにより床に落ち軽快な音を立てた。
誰もが空いた口が塞がらない中、恐らく彼女の能力を知っていたのであろうヒソカだけがくつくつと笑った。
・
1575人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未確認歩行物体(プロフ) - たくさんのコメントありがとうございます。まとめての返信で失礼します。しばらく更新していないにも関わらずたくさんの反応を頂きとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年11月24日 18時) (レス) id: 859f873e93 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 読んでいく事にチートっぷりを発揮してて面白かったです!最高! (2021年7月8日 14時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
なめなめきゃんでぃ(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて読んでいてとっても楽しかったです!番外編や次回作など楽しみにしてます!できたらで良いので書いてくれると嬉しいです!素敵な作品を書いてくださりありがとうございました!!! (2021年4月8日 23時) (レス) id: ed253bb936 (このIDを非表示/違反報告)
猫神(プロフ) - とても面白かったです!蟻編楽しみにしています! (2021年1月16日 0時) (レス) id: f54e673977 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 番外編で構いません!更新いつまでもお待ちしております! (2020年11月12日 22時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ