救いの両手を差し伸べられるなら。２

救いの両手３５ ページ12

現在、私は或る赤煉瓦造の建造物(ビルヂング)の一階に居ます。


店名は喫茶店うずまき。


何を隠そう、武装探偵社の溜まり場である。



『店主(マスター)、エスプレッソ一つお願いします』


「畏まりました」


店内を静かに漂う珈琲の香り。

うん、悪くない。探偵社員が此処に屯(たむろ)するのも解る気がする。


何故なら、凄く落ち着くから。


私の他にもちらほらお客さんは来ていて、赤毛を三つ編みにした娘がパタパタと接客をしていた。


あの娘は確か、元組合(ギルド)の＿＿＿。



辞めよう。私は深く関わっていないし、その時は首領に県外の任務へ向かわされていたから。




聞けばポートマフィアと武装探偵社は停戦協定を結んだとの事。




ならば何故、私に内部調査を命じたのだろうか。



思えば敦君も警戒はしていたものの戦闘態勢ではなかった。



乱歩さんはそれを見越して私の正体を暴いたとしたら………………流石としか云い様がない。


「お待たせ致しました、エスプレッソです」

『あ、有難う御座います。』


ふわり、苦味と深みの有る珈琲独特の香りは、この珈琲が如何に良い物か判らせて呉れる。


『わ、いい香り』


優しく微笑む店主(マスター)を目の端に捉え乍らカップを口に運んだ。


あ、美味しい。



と、こんな感じに珈琲を只堪能しに来るのが本来の目的…………………ではない。


本当はこの喫茶店に私が居たら探偵社員はどんな反応をするかを試したいんだ。


因みに中原さんには内緒です。


帰ったら怒られるかな………。

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