【可愛いの化身】＿＿ 配達員 ページ6
最近のマイブーム、という程ではないけれど、中庭で読書をするのが自分の中で少し
一人でまったり過ごす時間は中々悪くない。次は紅茶とお菓子でも用意してみようかな、なんて考えていると中庭と部屋に繋がる扉が小さく音を立てて開いた。
「んっ！？」
「あれ、ビクターくん」
冷静な私とは対照的にかなり驚いている様子のビクターくん。その驚きようは、私が中庭にいることに対してなのか、それとも馬鹿な私が柄にもなく読書をしていることに対してなのか…いや、考えるのはやめておこう。
「ビクターくんも休みにきたの？いいよね中庭。すっごい落ち着く〜」
「……」
「あ、こっち一緒座る？おいでおいで」
「……」
「……」
会話続かねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うーん、いや、ビクターくんが人と接するの苦手とは聞いてたし、そもそもあんまり関わらない私と急に二人きりっていう状況は彼にとって地獄なんだろうな。私がルカやアンドルーだったらきっと違ったんだろうけど…
どうにか軌道修正をかけたい所…悶々とこの状況をどう良くさせるか考えていれば、意外にも彼の方からアクションがあった。
無言で私の隣に座り、メモ帳とペンを取り出しサラサラと文字を書いていく。書き終わったメモを控えめに渡されると口元を可愛らしく両手で覆った。
『お邪魔でなければ少しだけお隣失礼したいです』
綺麗な文字で敬語を使った丁寧に書かれた文。女の子みたいにもじもじするビクターくんはとても可愛くて心を撃ち抜かれそうになる。
二人掛けのベンチの隣をトントンと叩き、隣に座るよう促すとニコニコしながら腰をかけた。
「ビクターくん、この後ゲームの予定は？」
「んん！」
「ほんと？じゃあゆっくりできるね」
最初は難航するかと思われたコミュニケーションも、案外難しくなかった。
私が害の無い人間だと思われたのだろう。五分も経たずとも彼は私に興味を示し、積極的に筆談で距離を縮めてくれた。
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作者名：瀬川 | 作成日時：2022年2月3日 14時
