背中を押して ページ43
「A!」
八左ヱ門の声にくるりと振り返ると、後ろから敵兵が私に刀を向けていた。
とっさのことに一瞬反応が遅れる。
これは一撃受けるしかないか、と避けるのを諦めて衝撃を緩和させようと動く。
が。
「お前、何やってんだよ!」
「八左ヱ門……!」
微塵がガッとそいつの頭に当たり、後ろ向きに倒れた。
「ごめん、ありがとう」
「……どういたしまして!」
また新たにやってきた敵を蹴り倒しながら、ニカッと八左ヱ門は笑う。
「一階突破!」
混沌とした城の中を、低い声が響き渡る。
それでも尚、向かってくる兵たちの忠誠心には、感服するものがある。
とはいえ、このままでは前に進めない。
「A、行って!」
私の前にいた敵をまとめて吹き飛ばした八左ヱ門が、そう言って私の背中を押す。
「Aはここにいちゃダメだろ!? ここは俺がなんとかするからAは先に行け!」
「……うん!」
一度身体をグッと沈めると、勢いをつけて駆け出した。
「行かせるな!」
「何としてでも二階に上がらせてはならぬ!」
そう言って私の方にやってくる兵たちを、できるだけ目を合わさないようにして槍の柄で薙ぎ倒す。
「「A!」」
私を呼ぶ二つの声と共に、勘右衛門と三郎が合流してくる。
「ごめんA、無事?」
「ん。なんとか」
三人で向かってくる兵たちの波を切り開きながら、前へと進んでいく。
「八左ヱ門は?」
「先に行けって。ここは俺がなんとかするからって」
「流石、言うことが違う」
少し目を伏せた私に、冗談めかして勘右衛門がそう言った。
「そんな顔するなって。ここの兵を倒すことくらい、あいつの腕なら楽勝だよ。すぐ追いつくさ」
三郎が励ますように私の肩を叩いた。
「ありがとう」
今はただ、信じるだけ。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます!この話本当に上げていいのかな?って五時間くらい考えて、やっぱり上げました。驚かせてしまってすみません(笑)めちゃくちゃ遠回りすることになるとは思いますが、いつかは幸せになるはずなので、お付き合いいただけると嬉しいです。 (2020年11月9日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - この展開は決まっていたことなんでしょうが、ど、動揺が…(・・;)続き無理ない範囲で良いのでお待ちしています! (2020年11月9日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» テスト勉強はしようね……? とか言いつつ私も小テスト勉強一切せずに更新するんだけど。これからもご期待に添えるよう頑張ります。よろしくね。 (2020年11月9日 18時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
凛@昆布教(プロフ) - 冴川冬香さん» 期待通りって(笑)んー、まあまあ時間あるときに更新してくれれば。睡眠は学校の授業中とか塾とかでしてるから問題はないかなー(テスト1週間前)(夜以外も寝てる)ふへへいつまでも待つぜ (2020年11月9日 17時) (レス) id: 0b140bf78a (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» 壊れてないよー(笑)ものすごく期待通りの反応をありがとう。そしてごめんね。爆弾投下しといてなんなんだけど、今日更新できるかわかんないんですよねー。まぁ、適度な睡眠を取りながら待っていてくれると嬉しいです。 (2020年11月9日 5時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2020年9月2日 20時