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遠慮 ページ23

「もう大丈夫だよ。数馬、お疲れ様」
「先輩こそ、お疲れ様です」

まだ三年生の数馬には色々と耐えがたいものがあっただろうに、彼は私を気遣ってにこりと微笑む。

「無理して、笑わなくていいんだよ?」
「……僕は別に、無理してなんか」
「数馬」

尚も強がって首を振る数馬の言葉を遮って、私は少し怒ったような声を出した。
数馬にも数馬なりの矜恃はあるのだろうけれど、それで苦しいのを我慢するのは違うと思う。

「面倒見なきゃいけない後輩はここにはいないんだから、素直に甘えておきなさい。……来年になったら、今みたいにはいかないんだよ?」

私の言葉にくしゃっと顔を歪めた数馬は、堪えきれなくなったようにボロボロと涙を零す。

「久々知、先輩、苦しそうでっ……。伊作先輩も、新野先生もいなくて、A先輩もいらっしゃらないし、僕、もうどうすればいいのかわからなくて。でも、乱太郎たちは不安そうだし、僕がしっかりしなくちゃって、そう、思って……っ!」

数馬は私に縋り付いて、溜まっていたものを全て吐き出すかのように泣いた。
私はその一つ一つに「ごめんね」と謝りながら、数馬の頭をそっと撫でる。

上級生として、自分が不安そうにしていてはいけないと思っていたのだろう。
左近たちがいた時には全くそんなそぶりを見せていなかったのに。

……優しすぎるんだよ、皆。

数馬が泣き止むまでの間、私は彼をギュッと抱きしめていた。






しばらくして落ち着いた数馬をそっと離すと、彼は恥ずかしそうに笑った。

「すみません、A先輩。恥ずかしいところを見せてしまいました」

「後輩が遠慮しないの。もう大丈夫って思ってるかもしれないけど、苦しくなったり、気分が悪くなったりしたら、すぐ担任の先生に言うこと。人間の心って、私たちが思っているよりもずっと繊細なんだから、侮っちゃダメだよ?」

ピッと人差し指を立ててそう言った私に、数馬はわかっています、と微笑んだ。

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設定タグ:忍たま , 山田家 , 久々知兵助   
作品ジャンル:ラブコメ
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます!この話本当に上げていいのかな?って五時間くらい考えて、やっぱり上げました。驚かせてしまってすみません(笑)めちゃくちゃ遠回りすることになるとは思いますが、いつかは幸せになるはずなので、お付き合いいただけると嬉しいです。 (2020年11月9日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - この展開は決まっていたことなんでしょうが、ど、動揺が…(・・;)続き無理ない範囲で良いのでお待ちしています! (2020年11月9日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» テスト勉強はしようね……? とか言いつつ私も小テスト勉強一切せずに更新するんだけど。これからもご期待に添えるよう頑張ります。よろしくね。 (2020年11月9日 18時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
凛@昆布教(プロフ) - 冴川冬香さん» 期待通りって(笑)んー、まあまあ時間あるときに更新してくれれば。睡眠は学校の授業中とか塾とかでしてるから問題はないかなー(テスト1週間前)(夜以外も寝てる)ふへへいつまでも待つぜ (2020年11月9日 17時) (レス) id: 0b140bf78a (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» 壊れてないよー(笑)ものすごく期待通りの反応をありがとう。そしてごめんね。爆弾投下しといてなんなんだけど、今日更新できるかわかんないんですよねー。まぁ、適度な睡眠を取りながら待っていてくれると嬉しいです。 (2020年11月9日 5時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2020年9月2日 20時

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