勘右衛門 最後のお節介 前編 ページ3
いつもより少しゆっくりな時間にAに起こされ、俺たちはもぞもぞと布団から起き上がる。
通常の夏休み開始から二週間が過ぎた朝。
俺たちが学園を発つ朝だ。
いつもは初日に決めた料理当番が朝ごはんを作るのだけれど、今日は約束したわけでもないのに全員が調理場に集まる。
自分が作るつもりだったらしいAが、もっとゆっくりしてて良かったのに、と笑った。
俺たちはわいわいと騒ぎながら六人一緒に朝食を作る。
皆が楽しそうに喋る中で、Aと兵助がお互いには一言も交わしていないことには全員が気づいていたけれど、溜息を吐くだけで誰も何も言わなかった。
「ねぇねぇ兵助。この後街に寄ってから帰ろうと思うんだけど、一緒にどう？」
医務室の戸締まりの最終チェックしてくる、と言ってAが部屋を出た後、俺は兵助にそう声をかける。
「……最近できた豆腐屋にも寄るなら」
既に私服に着替えた兵助が、そう言ってチラッと俺を見る。
「あー、はいはい、豆腐ね豆腐。わかったわかった」
こんな時でも通常運転な兵助に苦笑しながら俺は頷く。
いや、むしろこんな時だからこそ、なのかもしれない。
まぁでもAを誘うな、とは言っていないし、門の前辺りで誘ってみるか。
「俺たちは街に寄り道してから帰るつもりなんだけど、Aたちはどうする？ 一緒に来る？」
俺が笑顔でAにそう言うと、一瞬兵助を横目で見た彼女は困ったように眉を下げた。
「私はやめとく。母様になるべく早く帰って来いって言われてるし」
ゆるゆると首を振って断るAに、兵助が少し寂しそうな顔をした。
そんなことには気がつかなかったのか、Aはまたね、と手を振って駆け出していった。
Aも兵助も、別にお互いのことが嫌いになったわけではないのだ。
伊作先輩とAが付き合っているのだと思い込んで遠慮している兵助と、兵助に嫌われるのが怖くて一歩踏み出せないA。
お互いに、お互いのことが好きすぎて、大切にしようとしすぎてすれ違っているだけなのだ。
周囲から見たら丸わかりの、こんな簡単なことなのに。
俺はポン、と兵助の肩に手を置くと、街の方へと歩きだした。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます！この話本当に上げていいのかな？って五時間くらい考えて、やっぱり上げました。驚かせてしまってすみません（笑）めちゃくちゃ遠回りすることになるとは思いますが、いつかは幸せになるはずなので、お付き合いいただけると嬉しいです。 (2020年11月9日 21時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - この展開は決まっていたことなんでしょうが、ど、動揺が…(・・;)続き無理ない範囲で良いのでお待ちしています！ (2020年11月9日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» テスト勉強はしようね……？ とか言いつつ私も小テスト勉強一切せずに更新するんだけど。これからもご期待に添えるよう頑張ります。よろしくね。 (2020年11月9日 18時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
凛@昆布教(プロフ) - 冴川冬香さん» 期待通りって（笑）んー、まあまあ時間あるときに更新してくれれば。睡眠は学校の授業中とか塾とかでしてるから問題はないかなー（テスト1週間前）（夜以外も寝てる）ふへへいつまでも待つぜ (2020年11月9日 17時) (レス) id: 0b140bf78a (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 凛@昆布教さん» 壊れてないよー（笑）ものすごく期待通りの反応をありがとう。そしてごめんね。爆弾投下しといてなんなんだけど、今日更新できるかわかんないんですよねー。まぁ、適度な睡眠を取りながら待っていてくれると嬉しいです。 (2020年11月9日 5時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年9月2日 20時
