わからなくて ページ12
「そういえば、さっき泣いてた理由、聞いてもいい？」
お茶をこくりと飲んだ伊作先輩が私にそう訊いてきた。
「理由、ですか……」
「あ、言いたくなければ別にいいよ？」
少し考え込んでいると、慌てたように先輩が言った。
「いえ、そうではなくて。少し長くなるんですけどいいですか？」
こくっと伊作先輩が頷いたのを見て、私は話しだす。
「学園の皆、優しいじゃないですか。一緒に手をつないで、隣を歩いてくれて。
私は女だってことを秘密にしていて、他にもたくさん隠していることがあるのに。
父も、学園長先生も、そろそろ皆に言ってもいいんじゃないかって言ってるんです。
隠していたいと思っているのは私だけです。
わからなくて。
このままでいいわけないのに、本当のことを言うのが怖くて。
一人じゃないと言ってくれる人がいるのに、皆を信じることができなくて。
申し訳なくなっちゃって」
「それで、泣いちゃったんだ」
私の頭をよしよし撫でながら、先輩が言う。
「はい、お恥ずかしながら」
「泣くことだって、時には大切だよ」
そう言って伊作先輩が微笑む。
「私、どうすればいいんでしょうか」
私が訊くと、んーと少し考えて、先輩は口を開いた。
「きっともう、Aの中に答えはあると思うよ」
「そう、でしょうか」
「うん。難しいことが重なりすぎて、わからなくなっているだけ」
「先輩なら、どうやって答えを見つけますか？」
「僕なら……」
日記を書くかな、と先輩は言った。
「日記、ですか」
「何でもいいから、文章にしてまとめてみる。思っていることが書けるから、ちょっとすっきりするしね」
「すっきり。それはいいかもしれませんね。……やってみます」
早速今日にでも始めてみよう。
「あ、そうだ、A。次にもし、保健委員を助けて怪我をしたら、僕の部屋においで。何時でも、手当てしてあげるから」
そう言って先輩がにこっと笑う。
それはありがたい。
「ではお言葉に甘えて、そうさせていただきます」
私がそう言って笑った時、午後の授業終了の鐘が鳴った。
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スイちゃんですよ〜☆ - 今作も良かったです！(^^ω)次の続編に向けて出港。！ (2023年1月23日 0時) (
レス) @page39 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
ユリリン(プロフ) - 今回の話も面白かったです。今後も健康に気をつけて更新がんばってください。引き続き楽しみに待っています。 (2020年5月10日 20時) (レス) id: 4f0d699f1e (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - ユリリンさん» いつもありがとうございます。この先の展開は一応決まっているので、できるだけ早く更新できるようにしますね。ご期待に応えられるよう、頑張ります。 (2020年5月9日 11時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ユリリン(プロフ) - このあとの夢主が心配です。皆が暖かく迎える事を信じます。更新楽しみにしています。引き続き健康に気をつけて更新がんばってください。 (2020年5月9日 10時) (レス) id: 4f0d699f1e (このIDを非表示/違反報告)
唯(プロフ) - 冴川冬香さん» ありがとうございます！こちらもリクエスト受け付けていますのでこれからもよろしくお願いします！ (2020年5月5日 3時) (レス) id: 238aca14d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年4月30日 10時
