豆腐少年とうどん少年 ページ10
「では狐蝶。肉の調達は頼むぞ」
学園の裏山。
ねね先輩、文左衛門とわたしは、休日を利用してピクニックに来ていた。
……といっても、昼を自分たちで狩りをして調達する、超サバイバルなやつなんだけど。
二人と別れたわたしは、その辺に潜む兎を片っ端から狩っていくのだが。
……どこだ、ここ。
困ったことに、迷子になった。
集合場所がどこなのか、さっぱりわからない。
その時。
後ろでガサッという音がして、わたしは振り返った。
そこにいたのが猪とかならそれはそれでピンチだとは思うけど、そういうわけではなく。
「豆腐と、うどん……？」
豆腐の匂いが全身からする少年と、まるでうどんのような摩訶不思議ヘアーの少年がいた。
「うどんとはなんだよ！」
うどん少年(勝手に命名)がそう言うけれど、わたしはそれを無視して踵を返す。
……気持ち悪い。
二人を見た時から、胃の中から何かが込み上がってくるような感覚がする。
この人たちといたら“わたし”が崩れる。
きっとまずいことになる。
そんな気がする。
「あ、おい！」
豆腐少年(これまた勝手に命名)が呼びかけてくるのも知らないフリをして、わたしは駆け出す。
お守りのようになりつつある豆腐の簪を懐から出して、わたしは頭に挿した。
……何でつけて来んの。
山で迷子になったら上へ上がれ、と前に誰かに言われたのを思い出してわたしは山頂を目指して歩くのだが。
二人が後ろから付いてくる。
楽しそうににこにこしているうどん少年と、怖い顔で睨んでくる豆腐少年。
「……豆腐。うどん。何か用か？」
あまりにしつこいのでわたしは二人に向き直った。
「あの、その前に『豆腐』と『うどん』って呼び方やめてもらえません？」
二人に声を揃えてそう言われるが、わたしは彼らの名を知らない。
そう言うと、二人は驚いたように目を見開いた。
「お前たちがどこの誰かなど、わたしが知るわけがなかろう」
もうついてくるな、と手をひらひらさせると、うどん少年が豆腐少年の袖を引く。
「ほら、もう帰ろう」
うどんにそう言われた豆腐は、悲しそうにくしゃっと顔を歪めた後、とぼとぼと歩いていった。
……何、あの子。
彼らは何を知っているのか。
わたしは何を忘れたというのか。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
