豆腐じゃん ページ6
「はい、これ。蘭にあげるわ」
ご自分の部屋に取りに行ってくれたねね先輩が、帳面と筆記用具を差し出してそう言った。
「いいんですか？」
「もちろんよ」
にこっと笑ってそう言ってくれるのに断るのは悪い気がして、わたしはありがたく受け取ることにする。
「じゃあ、今日は蘭は私と出る日だから。衣装に着替えて、行きましょう」
支度をしてくる、と先輩が部屋を出て行く。
わたしは枕元に置かれていた狐蝶の衣装を手に取り、ハァッと息を吐いた。
……何かおかしい。
何がどう、とは言えないけれど、ものすごく違和感を感じる。
説明のできないこの気持ち悪さ。
わたしの居場所はここじゃないような。
「……考えすぎか」
何年も前からこの城にいるのに、何を今更言っているのか。
わたしは気にしないことにして首を振ると、衣装に着替え始めた。
カラン……。
単を持った時、中から何かが床に落ちた。
なんだろうと屈んで見ると、白色の小さな玉に、緑と黄色のゆらゆらがついた簪。
「え、豆腐じゃん、これ」
どこからどう見ても冷奴である。
何故衣装に入っていたのかはわからないが、おそらく自分のものなのだろう。
いつものように赤い髪紐で一つに結ったところに、わたしはその簪を挿した。
「お待たせしました」
城門の前に行くと、既に先輩はわたしのことを待っていた。
「いいえ、大丈夫よ」
今日行くのは、忍術学園の裏の山である。
一年生のとあるクラスがそこで実習をするという情報が入ったらしい。
小さい子を傷つけることに躊躇いがないわけじゃないけれど。
……城のため、だよね。
義兄様の教えているクラスは四年生だから、遭遇することもないはずだ。
……なのに何で、こんなにモヤモヤするの。
簪を見た時にも感じたこの気持ち。
わからない。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
