閑話 君と ページ49
兵助side
Aが学園長先生に呼ばれて部屋を出ていった後、俺は息を吐きながら床に後ろ向きに倒れ込む。
……Aが鈍すぎて困ってます、誰か助けて。
いや本当、冗談抜きで。
『ねぇ、兵助』
頭を撫でていた時に、上目遣いで俺を見てきたAを思い出す。
可愛かった。
でも、A本人は絶対自分が上目遣いしてることに気づいてない。
あまりの可愛さに、つい本音が漏れてしまって焦った。
Aのことが好きだ。
俺が何か言うと表情がコロコロと変わる。
スッと大人のような顔をしたかと思えば、昔のように無邪気な笑顔を見せたりする。
芯が強くて、綺麗で優しくて。
物語のお姫様のように守ってあげたくなる儚さはないけれど、できることならずっと俺が守りたい。
いっそ閉じ込めて、ぐちゃぐちゃに甘やかしてしまいたい。
無理をして強くあろうとする彼女を、俺のものにしたい。
……こんなこと思ってるって知られたら、引かれるんだろうな。
忍者の三禁だから。
今の関係を壊したくないから。
想いを伝えたら、きっと離れて行ってしまうから。
「……もう少しだけ、このままでいさせて」
「兵助？ 何やってんの？」
頭上から勘右衛門の声がして、俺は驚いて飛び起きる。
「か、勘右衛門！？」
「いやー、Aがヘムヘムとどっか行くのが見えたから、もういいかなーって」
天井裏からスタッと降りてきて勘右衛門が笑う。
「んで？ 何？ 兵助はAが可愛すぎて悶えてんの？」
ニヤニヤと笑いながら、勘右衛門は座っている俺の頭に体重をかけてくる。
「えっ、いや、別にそんなのでは……」
俺が誤魔化すようにそう言えば、トンッとおでこを指で叩かれる。
「目が泳いでてバレバレ。いい加減、もう告っちゃえば？」
男じゃないってわかったんだし、問題ないじゃん、と勘右衛門が言う。
「でも、Aは好きな人いるらしいし。それなのに言ったところで、砕け散るのはわかってるし……」
うじうじとしている俺に、勘右衛門は呆れたように溜息を吐く。
「ずっと前から兵助がAのこと好きだって知ってたから黙って身を引くつもりだったけど、そっちがその気なら俺たちも黙っちゃいないからな」
……俺
勘右衛門の言葉に顔を上げると、いつの間にか隣に三郎も立っていた。
「「本気でいくから。覚悟しとけよ？」」
戦闘開始を告げる鐘の音が、どこか遠くで鳴った気がした。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
