私の使っていたもの ページ44
封筒に書かれている字は、ここ半月ですっかり見慣れてしまった、荒井ねねの字だった。
昨日の今日だから毒などの心配をすべきなのだろうけど、狐蝶に対して優しかったねね先輩を思い出すと、そんなことをするような人ではないと思う。思ってしまう。
蘭の記憶も多少は関与しているのだろう。
“ここの奴らに虐められたら、いつでもいらっしゃい”
ちゃんと、私の名前を呼んで、そう言ってくれたねね先輩。
彼女なら、きっと大丈夫だ。
私は意を決して、封を開けた。
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Aへ
元気にしているかしら。
って、二日前に別れたばかりの人間が言う台詞じゃないわね。
こちらは相変わらず……いえ、貴女がいなくなったことで少し暗くなっているけれど、皆元気でやっています。
朝の貴女の話を見させてもらいました。
それに対する学園の生徒たちの反応によっては、貴女を連れ戻すつもりでね。
でも、無駄足だったみたいだわ。
家に居場所がないと泣いていた、小さな蘭はどこにもいなくて、貴女は皆に囲まれて笑っていた。
私たちの負けだわ。
チャミダレアミタケはこれから貴女が卒業するまで、忍術学園には極力手を出さない。
学園長にも言っておいてちょうだい。
あ、ちなみに、ウチの人間は皆、貴女のこと待ってるから。
いつでも帰ってきていいのよ？
卒業後の就職先候補にも、入れておいてね。
そうそう。荷物の中身は、貴女が城で使っていたものです。変なものは入れていないから、確認してちょうだいね。
では、また。
豆腐の彼とお幸せに。
_________________________荒井ねね
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……毒は入ってなかったけど、ものすごい爆弾を投下して行ったね、あの人。
私は溜息を吐くと、床に置いていた包みを開く。
狐蝶の衣装、モーニングスター、日記代わりの帳面。ねね先輩がくださった筆記用具などの中に紛れて入っていたのは。
一本の、簪。
兵助が買ってくれた、
手で持ち上げると光が反射してキラッと輝く。
私は一度他の荷物を包みに戻して、きゅっと口を縛った。
部屋の隅にそれを置いて、簪を頭に挿すと、またゴリゴリと薬草を潰し始めた。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
