静かに大混乱 ページ42
皆はどう思ったんだろう。
怒っているか。はたまた軽蔑しているか。
下げた頭を上げるのが怖い。
それでも、気合いを入れて私はえいやっと顔を上げる。
……あ、れ、れ？
眼下に並ぶ彼らの顔は、怒ってはいなく、軽蔑しているような顔でもなく。
主に下級生を中心に、静かに涙を流していた。
……は？ え？ 泣いてる？
え、待って待って待って？
特に上級生！
そんなに泣かないでください、肩身が狭い。
マイクを持って皆を見つめたまま動かなくなった私と、何故か泣いてる生徒たち。
一番よくわからないのは食満先輩。
それほど接点があったわけでもないのに、全力て男泣きしてくださっている。
最初は泣いていたらしい伊作先輩も、今は軽く引きながら食満先輩を宥めるのに忙しそうだ。
「A？ どうした？」
後ろからそっと半助兄様が声をかけてくる。
「いや、あの、なんで皆泣いてるんですか？」
マイクを通さないようにして私が聞くと、半助兄様は複雑そうに顔を歪める。
なんで、そんな顔をするの？
だって私は狐蝶で。
皆を傷つけて。
ここにいちゃいけなくて。
「「A先輩、馬鹿なんですか！？」」
最前列にいた滝夜叉丸と三木ヱ門が、声を揃えて言ってくる。
あまりの剣幕に、私は驚いてビクッと肩を震わせた。
「私たちがこの半月間、どれほど心配したかわかってますか！？」
「なんでまたいなくなろうとしてるんですか！」
何かのスイッチが入ったかのように、二人揃ってくどくどと説教を始める。
いつもの自慢話で培ったプレゼン力と、困った委員長への苦言で養われた説教スキルを、二人まとめてこんなところで使わないで欲しい。
「え、えーっと、つまり、まとめると？」
「先輩が出ていく必要なんてないってことですよー」
踏み鋤に体重をかけながら、喜八郎がそう言う。
ねぇ、皆さん？ と後ろを振り返る喜八郎につられて、私も皆の方を見た。
涙でぐちゃぐちゃになった顔で、皆が頷いてくれる。
あぁ、私はもうとっくに、皆に受け入れられていたんだ。
私の居場所は、ちゃんとここにあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
