朝会 ページ40
「うぉっほん。今日皆に集まってもらったのは他でもない。既に知っている者もおると思うが、半月ぶりにAが帰ってきた。そのことについてAから話があるので、静かに聞くように」
学園長先生が台の上で話しているのを、私は神妙な面持ちで見ていた。
さぁ、行って来なさい、とマイクを渡され、私は入れ替わるようにして台に登る。
「皆さん、おはようございます。こうしてここに立つのは、かれこれ一か月ぶりとなりました。……いえ、皆さんと会うのも、半月ぶりなのですね。私は皆さんに、この半月間、私が何をしていたのかについて話したいと思います」
そんな前置きと共に、私は話し始める。
正しいと思うことのために。
────────────────────────
皆さんは、狐蝶についてご存知ですか？
そうです。十八年前に初めて現れ、十二年前に突然消えた、狐の面をつけた忍びです。
そして、彼女は私の母でもありました。
とは言っても、私は彼女のことをほとんど覚えていませんでした。
彼女が亡くなったのは私が二歳の時で、そこからはずっと伯母の家で育てられてきたのですから。
でも皆さんの中には、狐蝶と会ったことがある、という人もいますよね。
その狐蝶＿二代目の狐蝶こそが、私、五十嵐Aでした。
狐蝶になりたての頃の私は、まだ学園の皆に女であることを隠していました。
それが心苦しくて、何か償いがしたくて、私は皆を守るため、狐蝶になりました。
狐蝶として活動するようになってしばらくして、毎回誰かに見られていることに気がつきました。
警戒は、しているつもりでした。
でも、ダメだった。
あの日、火薬委員会と保健委員会の上級生と薬草を採りに行った私は、少しの気の緩みが原因で、母の所属していたチャミダレアミタケ忍軍に捕まりました。
チャミダレアミタケの人間だった時の母の記憶を埋め込まれた私は、城主の命令で学園の皆を襲うようになりました。
皆を守ろうとする偽善者の狐蝶も、心が弱くて操られていた狐蝶も、どちらも私です。
ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
────────────────────────
そこまで言うと、私は深々と頭を下げた。
学園の皆には、頭を下げてばかりだ。
隠し事をして、操られて、裏切って。
これではいけないとわかっているのに、何も変わらない自分が情けない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
