賭け ページ4
ねねside(第三者目線)
「おはよう、狐蝶。具合はどう？」
翌日。
ねねが朝食を持ってAの部屋に入ると、彼女は既に布団を畳んで座っていた。
「ずいぶん早起きね」
「早く記憶を戻したくて」
ねねさんにこんなに良くしてもらっているのに、覚えていないなんて申し訳ない、とAが俯く。
「朝ご飯持って来たの。これ食べたら、昨日お医者様がくれた薬を飲みましょう」
そう言ってねねは持っていたお盆をAに渡す。
「いただきます」
おいしそうに食べるAを見ていると、彼女の母である蘭のいた頃を思い出す。
蘭の記憶を無理矢理Aに入れるのには罪悪感もあるけれど。
……私の後悔を軽くしたいのよ。
蘭にいなくなってほしくなくて、組頭に言われたとおり、お茶に薬を混ぜた。
夫を自分の手で殺してしまった蘭は、狂って、狂って、狂気の先で、息を引き取った。
自害させるつもりなどなかったのに。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「さぁ、狐蝶。薬を飲んで。きっと何か思い出すきっかけになるわ」
そう言って、ねねはAに薬の入った小瓶を渡す。
一気にそれを飲み干したAは、プツンと何かが切れたようにその場に崩れ落ちた。
「えっ！？ 狐蝶！？ 狐蝶！？」
目の前で意識を失ったAを慌てて揺すり起こそうとして、ねねは手を止めた。
Aの髪の色が、根元からだんだんと黒に変わっていっている。
それが完全に綺麗な黒髪になった時、Aがそっと目を開けた。
さっきまでの青い瞳はどこにもなく、昔ずっと見ていた、懐かしい血の色の瞳。
「ねね先輩？ どうしたんですか？」
固まって何も喋らないねねに、Aが目を瞬く。
「蘭。おかえりなさい」
賭けは、成功した。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
