“愛”故に ページ25
《わたしの姉様はなんでもできてすごい》
(姉様ばかり褒められてずるい)
《姉様はその影で沢山の努力をしているわ》
(わたしだって頑張ってる。姉様に負けないくらい、いっぱい、いっぱい！)
《姉様はすごいのよ。わたしの自慢の姉様》
(姉様がいなければ、わたしだって愛してもらえるのに。姉様がいるせいで、わたしはいつも二番目。明るくて、優しくて、行動力がある。わたしの欲しいもの、全部姉様が持っていく)
《それでも、姉様は姉様よ。小さい頃からわたしを守ってくれたのは、他でもない姉様じゃない》
チャミダレアミタケにいる間、蘭は、“わたし”はずっとぐるぐるとこんなことを考えていた。
羨ましくないわけなかった。
寂しくないわけもなかった。
でも、蘭が家を出たのは姉が嫌だったからではない。
「大好きだったんですよ。姉様のことが、大好きだったんです。
だからこそ離れた。姉様を傷つけるのが怖くて。
これ以上一緒にいて、もし姉様のことが嫌いになったら？
そう考えたら、怖かったんですよ」
勝手な私の推測かもしれないけれど。
その思いにはなんとなく、覚えがあるから。
「そう、なのかしら」
母様が自信なさげに言うのに対し、私は深く頷く。
「愛故に、なのです」
愛することは、守ることだから。
「『姉様のいる場所が、わたしの帰る場所です』」
いつか夢で見た台詞を口にすると、母様がハッと顔を上げる。
ずっと慕ってくれていたでしょう。
最後は笑っていたでしょう。
「だからもう、後悔しなくてもいいんです」
時には思い出して、泣いてしまってもいい。
忘れることだけが、前を向く方法じゃないから。
「夏休みになったら、皆で蘭たちのところへ行きましょう」
別れ際に、母様が笑ってそう言う。
"ありがとう……"
門を潜っていく母様の向こうで、蘭も微笑んでいるような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
