謝罪 ページ23
「A」
後ろから父様に呼ばれて、私はそっと振り返る。
「よく、帰って来てくれた」
なんとなく怒られる気がして身構えていたのに、父様からかけられたのはそんな優しい言葉。
ごつごつした手で父様が頭を撫でてくれる。
いつもは子ども扱いされているようで、つい逃げてしまうのだけれど。
久しぶりの感覚が、今の私には嬉しかった。
.
「本当に、申し訳ありませんでした」
学園長先生の庵で、私は床に手をついて深々と頭を下げる。
「具体的に何がどう悪かったのか、言うてみぃ」
学園長先生にそう言われ、私は一つずつ順番に上げていく。
「チャミダレアミタケに捕まった時点で私の力不足です。特に抵抗もすることもできずに、チャミダレアミタケのくの一、狐蝶として学園を襲ってしまいました」
弁解のしようもありません、と私は再び頭を下げる。
すると、学園長先生は呆れたように深く溜息を吐いた。
「真面目で融通が効かんとは思っておったが、まさかここまでとはな」
そう言った学園長先生は、厳しい顔で私を見る。
「まず、チャミダレアミタケに捕まったことじゃが」
私は何を言われてもいいように、お腹にぐっと力を入れる。
「まぁ、仕方のないことじゃろう」
「はい、大変申し訳……は？」
反射的に頭を下げかけて、言われた内容に目を見開く。
思わず学園長先生の顔を二度見した。
「じゃから、仕方ないことじゃと言っておる」
……シカタナイ？ え、は？ え？
「チャミダレアミタケの様子がおかしいことにはわしらも気付いておった。奴らが動く前に対策を立てられなかったのは学園の教師の、ひいてはわしの責任じゃ」
学園長先生の言っていることがよく理解できず、私はぽかんと口を開ける。
「それに、あの日あの場には、六年の善法寺伊作と五年の久々知兵助がおったのじゃろう？ どちらかというと、力不足はおなごのAを守れなかった彼らの方じゃな」
「え、えっと、あの？」
私は戸惑いの声を上げるけれど、学園長先生はそれに構わず話を続ける。
「狐蝶として学園を襲ってしまった、というのも許容範囲じゃろう。蘭はこの学園にあまり良い感情を抱いていなかっただろうからの」
私が驚いて顔を上げた時、後ろでそっと母様が目を伏せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
