帰還 ページ22
「「A！」」
後ろからよく知る声に呼ばれて、私は振り返る。
……父様、母様、半助兄様に、利吉兄様まで。
私の大切な、大好きな家族が並んで立っている。
皆にバレたら、とか、父様の仕事が、とか、そんなことは全て忘れて私は駆け寄っていく。
「父様、母様、皆！」
周りの目を一切気にせずに抱きつく私に、父様が驚いたように目を見張る。
「A？」
「ごめんなさい、私、本当に、」
ひっく、ひっくと嗚咽を漏らす私を、安心させるように母様が頭を撫でる。
「ごめんなさいの前に、言うことがあるんじゃなくって？」
そう言ってふふっと笑う母様の顔を、軽く首を傾げて私は見上げる。
「おかえりなさい、A」
「……っ！ ただいま！」
母様から優しくそう言われ、私は笑顔で帰還を告げた。
「どこも怪我はしていないか？ 大丈夫なのか？」
利吉兄様が私の頬を両手で挟んで、ぐいっと顔を上げる。
「だ、大丈夫です、利吉兄様。どうも、ご心配をおかけしました」
私を心配してのことだろうが、いつもより圧の強い利吉兄様に、私はたじたじになる。
「本当に心配したんだぞ？ 学園からはAがいなくなったと言われたのに、狐蝶は普通に活動しているのだから」
どういうことなのか訳がわからなかった、と言われて私は目を瞬く。
「利吉兄様は、狐蝶が私だとご存知だったのですか？」
「ご存知も何も、私が四歳の頃までは蘭の姉上は現役で活躍されていたからな」
「え、蘭の姉上、ですか？」
叔母上ではないのか、と聞くと、利吉兄様は懐かしそうに目を細める。
「一度叔母上、と呼んだら、老けたみたいで嫌だと言われてな」
お茶目な方だった、と利吉兄様が笑った。
「利吉くんばかりずるいぞ？」
私も心配していたのに、という半助兄様の不満そうな声を聞いて、利吉兄様が慌てて手をパッと離す。
「半助兄様。あの、私、半助兄様に怪我をさせてしまって」
「気にするな。あんなのすぐに治ったよ」
狐蝶(蘭)の時に怪我を負わせてしまったことを思い出し、パタパタと駆け寄って謝る。
優しく微笑んで手を広げてくれる半助兄様に、私は堪え切れなくなって飛びついた。
「は、半助兄様ぁっ！」
「おわっ！？」
「ご、ごめんなざいぃ！」
泣きじゃくって尚も謝る私に、半助兄様が苦笑した。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
