乱戦前夜 ページ17
忍術学園襲撃作戦明日決行の命令が出されたのは、そんなある日のことだった。
学園の教師たちが適度に負傷した今がチャンス、ということらしい。
ねね先輩たちが陽動を起こして事務員の小松田秀作を引きつけ、わたしたちが裏から侵入するのだ。
「蘭、くれぐれも気をつけて。お面が外れないようにね」
「無理だと思ったら止まるのだぞ。時には引くことも大切なのだからな」
先輩たちにそう言われ、わたしはこくりと頷く。
わたしはチャミダレアミタケの忍びだ。
相手は忍術学園。
城の敵。
情けは無用。
間違っても、いつもみたいに助けたりしないようにしなくては。
わたしは集中できないのを誤魔化すように、調理場に向かう。
何か作っていたら落ち着くかもしれないと思ったのだが。
「こ、狐蝶様！？」
「どうなさったのですか？」
調理場の女中たちを驚かせてしまった。
「なんだか落ち着かなくて。何か作りたいのだけれど、いいかしら」
そう言ってにこっと微笑んでみせると、調理場の一角を貸してくれる。
わたしは彼女たちにお礼を言って、棚から大豆を取り出した。
……で、わたしはなんで豆腐を作ったんだろう。
体重をかけて水を絞りながら、わたしは首を傾げる。
作り方なんて知らないはずなのに体が勝手に動いていて、気がついたら大量生産してしまっていた。
いつ作り方を知ったのかを思い出そうとしても思い出せない。
ただ、記憶の端々にあの人の、豆腐少年の笑顔がある。
また会いたい、と思う。
彼は学園の生徒だから、もしかしたら明日会うことになるかもしれない。
でもそれは敵として。
彼の笑顔が見たいと思うわたしには、襲撃する資格があるのだろうか。
「わぁ、狐蝶様、このお豆腐美味しいです！」
調理場を貸してくれたお礼、と作った豆腐を渡すと、女中たちは笑顔になってそう言った。
「良かったわ」
わたしも笑顔で返すのだけれど。
……何か違う。
作りたかった豆腐はこれじゃない。
もっと白くて、もっと滑らかで。
そして、もっと優しい味の豆腐。
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冴川冬香(プロフ) - j061191さん» ありがとうございます！ 沢山楽しんでいただけるよう、頑張りますね！ (2020年6月26日 18時) (
レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 面白くて�気�ら一気に読みました！兵助くん大人しそうにみえて意外と大胆な所もあって…続きが楽しみです。 (2020年6月26日 0時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冴川冬香 | 作成日時：2020年6月6日 8時
