二節 五部 ページ6
「後ろのショーメンだぁれ？」
その言葉で魔法にかかったかのように一斉に倒れる。ナオはいつの間にか中央にある出っ張りに座って小さな箱を抱えていた。その箱からは薄く煙が漏れ出ており、
「催眠か」
橙龍はナオを見る。
「そ、パンドラの箱……とはまたちょっと違うけど、同じような類の箱」
その煙は範囲内の人間にだけかかり、眠りに落とすらしい。もちろん龍である彼らには効くことは無い。
ただ一人…
「こいつ、倒れてんぞ」
そう言う黒龍の足元には催眠にかかって眠ってしまったティナの姿。
「……テヘッ？」
「おい」
ティナはアカに背負ってもらい先に進んでいくことにした。
階段を上って行くとダンスホールへ出たが誰もいないその場所に警戒が増す。
「アカ、シオはさっきの所に、キリュウとクロはまだ行ってない部屋に」
黒龍は考えを読めたのか顔を顰めナオに問う。
「主は」「ここにいる」
「ひとりでか」
「あぁ」
黒龍は濃く眉を顰め、睨む感じでナオをみる。
「そんな眉ひそめんなよ…」
心配症だなぁと黒龍の頭を撫でつつナオは言う。
「大丈夫、そう簡単に死にゃしねぇよ」
「すぐ死ぬ癖に…」
「縁起でもねーこと言うなよなー」
棒読みで感情の籠ってないような台詞を吐くと金龍も眉を八の字に曲げた。
「でもね、僕も心配なんだよ…？」
「……心配すんな、生きたるから」
金龍は何を言っても無駄だと察して「その言葉、信じてるからね」と下がった。
アカはティナを背負いつつ橙龍と共に先程の所へ。金龍も黒龍と共にまだ行っていない場所へと。
「さて、どうしようか……」
ナオは再びダンスホールをみる。
灰色に染まる色のない世界。
(ここにもキラキラとした色があったはずなのにね)
ナオは引き寄せられるように奥にある階段へ足を進め、踊り場に着けば足を止めた。
「きっと此処には玉座とやらがあったんだろうなぁ」
今は何も無いその場所にナオは立つ。
そこから見たダンスホールはとても広く、寂しい姿をしていた。崩れた壁や、窓があっただろうところからは光が漏れ、キラキラと埃が反射している。
もうすぐかと目を瞑ればカツンッ＿＿と誰かの足音がダンスホールに響いた。
ナオは顔を上げ、足音の正体をみた。
「っ…やっぱ……そう、なる……よね…
＿＿＿＿＿＿＿＿_____________ティナ」
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2019年7月28日 19時
