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一節 五部 ページ5

終わったと黒龍の聞き慣れた低い声がしてゆっくりと目を開く、一番に視界に映ったのは黒龍のいつもの姿。周りを見渡せばゴブリンの死骸が広がっていた。三秒で片付けたのだ。その割には黒龍に血が殆ど着いていないな、と、いつものことを今日もまた考えた。

「もっと奥、行ってみようか」
「…わかった」

 二人は更に奥へと進んで行く。

************

「ここらは寒くなってきたね」

 ぶるっと少し身震いするナオに黒龍は無言で着ていたマントをかけてやる。不思議そうに見上げるナオの頭を簡単に撫でながらそのまま着てろと言うとナオは少し眉を寄せた。

「…素敵(イケメン)か、辛いぞ」
「何だ急に」
「お前がさりげイケメンな行動するから‼︎」
「えぇ…」

 突然の、褒め逆ギレとも言えるナオの叫びに黒龍は呆れてまた溜息をついた。
 するとナオは足を止める。行き止まりのようだ。
 ここまで来て行き止まりなのは釈然としない。ナオは不満げながらも行き止まりなら仕方ない、道を引き返そう、と先刻から無言の黒龍の方を向けば、黒龍は来た道を睨んでいた。ナオも釣られて黒龍の見ている方向を見れば、「……あぁ、いつの間にこんなに」と呆れた。
 ナオと黒龍が来た道にはたくさんのゴブリンが、それも先程とは比にならない程に。

「刀でもこの量は(キツ)いなぁ」
「主、こっち」「おおっ!?」

 黒龍に後ろへ引っ張られ、どこかへ連れて走る。
 行き止まりのはずなのに黒龍は何処へ向かって走っているのか、突然のことに頭も追いついていないナオには全く分からなかった。

「ちょっ……黒龍!!一体どこにっ」
「……主」
「へっ…!?ちょっ」

 思いっきり黒龍の元へ引っ張られ抱き締められたかと思ったら、ナオを横抱きにし全速力で走る。ナオは混乱しながらも黒龍の腕の中でモゾモゾと動き、後ろを見やると驚きの光景に息を呑んだ。

「は……っ!?」

 黒龍は結構なスピードで走っている。ゴブリンからはどんどんと離れていっているはずなのに、全然変わらないように見える。それどころか……ナオは上を見上げて絶句した。

「黒煙…?」

 黒煙(くろげむり)、又ガイストとは、心臓をもつものにとって有害なものである。基本的に悪をもつ魂が人型の煙として存在し、心臓をもつものを襲い精神を崩壊させる。例えるなら○リーポ○ターにでてくる吸魂鬼(ディメンター)みたいなやつ。

「な、なんでここに……?」

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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時

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