夢語神龍壱【名前固定】 (ページ23)

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一節　二十三部ページ23

すると突然、後ろに知らない気配を感じた。
　ナオは急なことに驚き、素早く後ろに飛びながらそれが何なのか振り向き確認する。

「気付くの速いなぁ、もぉ〜…」

　陽気に呟く落胆の声はコツッと靴を鳴らして姿を見せた。
　それは金髪を揺らし、黄緑の瞳が綺麗に輝く儚く美しい少年だった。
　彼は笑ってナオの前までふわりと降り立つと、ナオの前で跪き手を取り言った。

「やっと見つけてくれたね、僕のお姫様(プリンセス)」
「…はぁ？」

　勿論彼を知らないナオは素っ頓狂な声を出す。
【敵対心がある者(ヤバい奴)】ではないとナオは直ぐに分かってはいたが、【ある意味危険人物(ヤバい奴)】であることに変わりない、と中々に理解不能で意味の無い警戒心を解けないでいた。
　何となく、ナオが彼から後ろの出入口に目を向けると、キラリと何かが輝いた気がした。それは彼に向かって何かが飛んでくる。
　それをマントで払うように手に持っているナイフで金属音を響かせながら弾くと、少年は嫌々そうに文句を言った。

「危ないじゃないか、ナイフを投げるなんて」
「うるせぇ」「クロ」

　奥から現れたのは、あからさまに不機嫌な黒龍。理由も何となく察している。
　その察した通りの台詞を黒龍はドスの効いた低い声で言う。

「俺の主に触んな」

　少年はそんなものお構い無しにへらりと嘲笑うように、黒龍に言った。

「嫌だね、彼女は僕のお姫様(プリンセス)だ。騎士(ナイト)は黙ってなよ」
「は？」

　ブチッと何だか嫌な音がした気がした。
　ナオはその嫌な音と感じる嫌な予感に、それがなんなのか察すると諦めたような顔をして一つ溜息をつくと、少年からそっと離れる。
　それと同時に、黒龍は少年に飛びかかった。

「死ねっ！」
「ったく、せっかくの感動の再会だというのにっ！」

　少年はこの展開を知っていたのか、直ぐに後ろに下がって黒龍の攻撃を避けた。
　これじゃ戦闘開始の合図な訳で＿＿
　穏便に済ませたいナオは黒龍に声をかける。

「クロ」
「主、主も下がって」
「だが」「大丈夫」

　何が大丈夫なんだ。
　話を聞く気がない黒龍にはもう何も出来ないと説得を諦め、ナオは下がって少し高いところに立った。

(大丈夫だろうか、心配だ)

　お互い無言。
　黒龍は不機嫌を表にし、少年はずっと笑みを崩すことなくニコニコと。その笑顔が尚更黒龍を煽る。