一節 九部 ページ9
目に頭にそして心臓に刃を立て、ぐらりと後ろに倒れるゴブリン。
黒龍がナオを抱きゴブリンから飛び降りると同時にそれはドォォォォンと地面に倒れた。
珍しく感情を、怒りを露とする黒龍は不機嫌増して舌打ちをかました。
「はぁ……びっくりした」
未だ抱き寄せられているナオはただ一言そう呟いた。
ナオ自身突然のことに思わず助けを求めたが、冷静になれば本人一人でも対処出来ることだった。
しかし中々離して貰えない黒龍にナオは眉をひそめ、「いや、離せよ」と突っ込んだ。が、黒龍はナオを抱きしめたまま動かない。
何事かとそのままにしてやると、黒龍はとんとナオの肩に頭をのせた。不思議に思いつつも黒龍の言葉を待つと心底安心したかのような声が漏れる。
「……マジびびった」
「!……あぁ、自分も」
突然の弱音にナオは驚きつつも話を合わせる。
滅多に弱音を吐かない黒龍がこんなことになるとは、ナオは本当に驚き、それでいて無力だと自身を攻めているのだろう。黒龍は無意識か、抱く力が強くなっていく。
「…俺、主、危ない目に遭わせた」
「あれは仕方なくね?」
突然の事だった、予想外のことに対応が遅れるのは仕方ないこと。実際、一応黒龍より強いナオだって固まって動けなかったのだから。
ただ、使命感、責任感の強い黒龍には【ナオに怖い思いをさせた】という『守る』行為が出来なかった悔いが残っている。【主】を守れない奴、そんな使えない奴は要らない。
黒龍はグルグルと最悪の考えが思考を駆け回る。
「……俺」
「黒龍」
「っ…」
ナオは黒龍の肩を押し、顔をのぞき込む。
ゆらゆらと不安げに、今にも泣き出しそうな顔にナオはハッキリと口にする。
(そうしないと、届いて欲しい言葉は届かない)
「一応言っとくが捨てねぇよ?」
その言葉に黒龍は目を見開く。その反応にナオは呆れ、言葉を続けた。
次から馬鹿なことを考えないように、ちゃんと信じて貰えるように。信じられるように。
「当たり前だろ。そもそも今回は仕方ねぇし、まずだな、なんで捨てられるって思うんだ。自分は何があろうとお前を捨てる気は無ぇぞ。捨てられたいなら話は別だが」
「んなわけねぇだろ!?」
「じゃあ不安になんなよなぁ、全く……でもまぁありがと、助けてくれて」
ふっと笑ってやれば少し嬉しそうな顔をする。
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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時