一節 四部 ページ40
「あのぉ」
何処か猫なで声で一人でいた黒龍に話しかける女性。
黒龍は視線をそちらに向けると女性は黒龍に近付き、腕にそっと手を触れて妖艶に笑う。
「一緒にお茶しない?」
「何故」
触れられたことに顔を顰め、女性から離れようとすると「えぇ〜?いいでしょう?」と、女性は逃がすまいと黒龍の腕を抱き締め手を絡める。
その瞬間、黒龍は女性を思いっきり振り払った。
「きゃぁ!?」
その勢いで女の人は倒れ、黒龍は武器を手にする。
(主以外の奴に触れられた、主以外の…嫌だ、気持ち悪い)
刀を抜こうとすると、後ろから聞きなれたあだ名で呼ぶ大好きな声が聞こえ、思わず動きを止める。
「クロ?」
女性の声がしたからか、ナオは黒龍の元へ駆け寄ると女性は先程とは違う甲高く耳障りな声で吠え始める。
「な、何よ、レディに手を出すなんて!!頭いかれてんじゃないかしら!?!!」
紳士国であるこの場所じゃ、女性に紳士であるべきなのは当たり前のこと。ただし旅人であるナオらは別だ。黒龍はその言葉を聞いて皆が皆お前に優しくするわけじゃない、自惚れるなという意も込めて女性を鋭く睨むと女性は「ひっ」と怯えた声を漏らし、走って逃げて行ってしまう。
その様子を見て何となく何があったのか理解したナオは黒龍に近付き服を少し引く。
「何となく察したけど……クロ」
まだ少し不機嫌そうな黒龍がこちらをみる。
これを【不機嫌】と取るには少し違う、【不快感】を感じているそんな雰囲気を黒龍から感じながら、ナオは黒龍の頭を撫でながら優しく言った。
「女の人に手を出しては駄目、何があろうとね。女性の身体に傷ができるのは良くない。黒龍は男だろう?耐えられるよね……ほんとは女の人が怪我をすることがないように気遣いとか守ったりできた方がいいんだけど…今は多分無理だろうから耐えて、ひたすら耐えて。全く……クロは顔がキレイな美人顔だし、もう見た目からしてモテる容姿してっからなぁ、これからもこういうのよくあると思う。でも!女の人には優しく…ね?」
そう伝えれば不快感は癒えたのか、黒龍は大人しくなっていた。そしてナオが言った言葉を何となく復唱し始め「…女に……優しく…主が言うなら」とナオの手を頬まで持っていき擦りよった。その仕草はまるで猫のようで、
「ほんと、お前は可愛いやつだな」
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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時