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「Aヌナ、大学は?」
夜も遅いからと、胃に優しいご飯を作ってくれたユンギくん。のんびりと向かい合ってご飯を食べていたら、彼は思い出したかのように私に尋ねた。
「いま夏休みだよ〜」
「ああ、そっか。じゃあヌナと一緒に出かけられるな」
「う〜ん、今週は明日と明後日だけバイトで、それ以外は空いてるけど……ユンギくん出かけて平気なの?今夏休み中だからどこも人多いと思う…」
アイドルが気軽に外に出れないことくらい、私にだってわかる。てっきり部屋に篭って漫画を読み続けて過ごすのだと思っていたけど、ユンギくんの考えは違ったらしい。
「バイトって何時まで?」
「え…?確か明日が22時で、明後日が18時までだけど……」
「なら、これ行こう」
携帯をポケットから取り出して、目の前に出される。「はなびたいかい…」綺麗な花火のイラスト共に、夏祭りを開催する旨が記載されたチラシが画面に映し出されていた。日付は明後日。ちょうどバイトが夕方に終わるから、確かにバイト終わりに行くのもアリかもしれない…いやでも。アイドルと一緒はだめでしょ…
「夜ならそんなに顔見えないし、なんなら帽子もかぶってくから大丈夫っしょ」
「いや、いやいやいや」
「なに。Aヌナは行きたくないの」
「そういうわけじゃないけど、危ないよ」
「だいじょーぶ。何かあったら俺が守ってあげるから」
「ちがう、私がユンギくんを守らなきゃなんだよ」
「ははっ、なにそれ」カラカラと笑うユンギくんに溜息を吐く。まったく…本人より私の方が心配してる気がする。
「………ほんとに大丈夫なの…?」
「だ〜いじょうぶだって。ヌナが守ってくれるんでしょ?」
ニヤニヤと揶揄うように笑うユンギくんに、これ以上何を言っても行くことになる結果は変わらないと思い、「バレない努力はしてね」と告げた。もちろん、と嬉しそうに微笑む幼馴染の姿に、不安もあるけれど、夏祭りがちょっとだけ楽しみになった。
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作者名:みいこ | 作成日時:2022年9月6日 15時