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「ヌナ、大丈夫…？」
「…うう、ユンギくん、ごめんね」
あれからいちご飴を食べたり、焼きトウモロコシを半分こしたり、露店で売ってる雑貨を見てまわったりしていたのだが、時間が経つにつれて、この前の時のような謎の気持ち悪さが私を襲っていた。
せっかくのユンギくんとのお出掛けを台無しにしたくなくて、バレないように我慢していた。でも、私の顔色の悪さに目敏く気付いたユンギくんは、すぐに「休もう」と私の手を引いて賑やかな屋台から連れ出した。
そして冒頭に戻る。
私たちは先ほどかき氷を食べたベンチに再び腰掛けていた。…否、正確にはユンギくんが腰掛けていて、私は彼の膝枕で横になっていた。
もうすぐ花火が上がる時間だというのに。申し訳なくて謝ると、ユンギくんは少しカサついた掌で私の頭を優しく撫でた。それがなんだか擽ったいような、心地いいような、眠くなるような感覚で、目を閉じて甘受する。
「気にしないでって。それより俺に気遣って無理しようとしないで……余計に心配する」
「ん、ふふ…ありがとう」
「ヌナはもっと俺に頼ってよ」
「頼ってるよ、今だってほら、膝枕までしてもらってる」
「こんなんじゃ足りない。もっと、もっとだよ」
「ん〜…」
ユンギくんの温もりが気持ちよくて、気持ち悪さが少しだけ軽減した気がした。
もっと自分を頼って欲しいという幼馴染に、でもわたしが一応年上だしなあ…と返事を濁していると、少し離れたところからひゅるるる…パァン！という音と同時に一気に視界が明るくなった。…花火が始まったみたいだ。
「お、始まったな」
「わああ…キレー…」
「ここからでもちゃんと見えるな」
「ね、じつは穴場だったのかも」
今年初の花火をちゃんと見たくて、体を起こしてユンギくんの隣に腰掛けた。
「無理すんなよ、俺に寄りかかっていいから」とそっと手を伸ばして肩をよせてくるユンギくんにありがたく甘える。柔らかいムスクの香りが鼻を擽って、ああユンギくんの香りなのかなって思うとなんだか胸の奥がむず痒くなった。
連続して打ち上げられる花火を、ふたり肩を並べて楽しんだ。
この時だけは、気持ち悪さは少しだけ息を潜めてくれた気がする。
そしてだんだんと盛大になってくる花火に目を奪われていて、隣でユンギくんが私を見つめて呟いていたことなんか、全く気付かなかった。
「…A、早くおれのものになって」
───この頃を境に私は不定期に、謎の体調不良に悩まされることになる。
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作者名：みいこ | 作成日時：2022年9月6日 15時
