自 ページ19
◇一九◇
「うん、まァ。乳繰り云々に関しては強く否定する」
「ならドライブデートは」
「うっ」
引き下がったように思われた銀さんからの鋭い質問に言葉を詰まらせる。上がってきた溜飲を下げようと茶飲みに手を伸ばすが、そこには空っぽになった底が見えるだけだった。三つに並んだ視線が痛い。顔をそろりと背け、私は喉に何かがつっかえているような喋り方で小さく言葉を吐き出した。
「……土方十四郎の運転するパトカーの助手席に乗せてもらった時のことであれば、本当」
「おっまえ、」「――けど!」
「けど、断じて“デート”ではないので、そこ間違えないで」
いや本当。そこを間違えられると困る。すごく困る。ここで嫌だと思わずあくまで困るだけ、という感情しか浮かばない時点で色々と負けているような気はするが、とにかく困る。嫌ではないが、困るのだ。
「……もういいでしょ。これ以上自覚させるようなこと言ったら依頼料から引いてくからね」
「自覚って。お前そりゃぁ、」
「お、さっそくマイナス一万円されたい感じ?」
「お邪魔しましたー!! ほらオメーら、報酬がゼロになる前に帰んぞ」
机に置かれた茶封筒へ目をやれば、途端に銀髪は慌てたようだった。わちゃわちゃとコマ送りのような動きで立ち上がると、従業員二人を連れてさっさと玄関へと駆け出していく。最初からこうすりゃよかった、という後悔と共に吐いたため息は彼らの喧しい足音にかき消されて自分の耳にも届かない。
――困る。困るかあ。奴とのそういう勘ぐりをされても、そんな言葉しか浮かばないとは。少し前なら、嫌だとか気持ち悪いだとか。そういう不快感からくる感情のようなものが湧いてきていたはずなのに。
(くっそう。さっさと一万円抜いてやったらよかった)
自覚、しちゃったじゃないの。
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ASK - 他と被らない設定、とても良いと思います。あまり甘々な絡みが好きではないので丁度いい (2019年5月21日 19時) (レス) id: 49e118c28b (このIDを非表示/違反報告)
三文(プロフ) - 純野翠雨さん» コメントありがとうございます。個性の強い夢主は嫌われやすいかも、と密かに不安だったのでそう言っていただけると嬉しいです!よろしければ、引き続きお付き合いいただけると幸いです。 (2018年9月17日 0時) (レス) id: 1d9b4e262e (このIDを非表示/違反報告)
純野翠雨 - テンポよくお話が展開していってすごく面白かったです!ヒロインのキャラが読んでて楽しかった! (2018年9月16日 21時) (レス) id: 13f3f7b214 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三文 | 作成日時:2018年9月3日 23時