56話 彼女の弱点 ページ7
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「……君と居ると飽きないな」
『だって普通はそう考えるでしょ、第一漢字が……え?何か言った?』
「……いや、とにかくその切り方は間違っている。切り方ぐらいは知っていると思って全て丸投げした僕も悪いな、そもそも包丁は1度に2本も使う事は絶対に無い、危ないだろう」
征十郎はぶつぶつ文句を呟くAから包丁を取り、元あった場所にしまう。
Aには基本の基本から丁寧に教えた方が良いみたいだ。
「いいか。まず乱切りは説明すると、包丁を入れる角度を変えて一定の大きさに切る事だ」
『えっ……?な、何?何で私の後ろに回るの?隣でお手本を見せてくれれば……』
1人でやらせるには危なっかしいので、征十郎が後ろからAを抱き締めるような体制をとってAの手を取る。
するとAは案の定、距離が近い、そんな事をする意味が分からないと言わんばかりに征十郎から離れようとした。
しかし征十郎に手を掴まれているため、どうにもならない。
「高宮はそもそも基本がなっていないから、手本を見せるだけだと危ない。実際に高宮の手で手本を体験させた方が早いだろう」
『だ、だからって別にこんな近づかなくても……!それに……』
「それに?」
『……耳が……』
「耳が?」
『……』
そこまで言って、ふっと俯くA。
一旦包丁から手を離すと、何度も右耳を触る。
先程まで征十郎はAの右耳の近くで喋っていた。
もしや……
「高宮」
『っひゃ!?』
もう一度、今度はもっと耳の近くで囁くようにAの名前を呼んだ征十郎。
するとビクッとAの肩が揺れて、今まで聞いた事が無いような無防備な声がAの口からもれた。
『な、っ……変な声出た……』
真っ赤に染まる耳。
『変な事しないで!』
キッとAに睨まれたが、その顔はほんのり赤く全くいつものしかめっ面ぐらいの怖さは無かった。
「……変な事?」
あくまでも平常心を保って、何も分からないというような表情で首を傾げる征十郎。
Aは前を向いて征十郎から顔を逸らすと、また耳を触った。
『だからっ……今みたいな……くすぐったくて……なんか……ゾワゾワするというか……』
「あぁ、さっきの」
『さっきの声は驚いただけ!』
そんなAの反応に、無意識に征十郎の口角が上がる。
これは良い事を知ったかもしれない。
高宮は耳が弱い。
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どろっぷ - すごく、おもしろかったです。更新、待ってます。 (2020年11月13日 19時) (レス) id: dcfe57966e (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ - すっげ………面白れぇ………更新、頑張って下せぇ!! (2020年9月7日 6時) (レス) id: 0b66878cc1 (このIDを非表示/違反報告)
仁王彩香 - ????? (2020年8月8日 11時) (レス) id: a60876bc3f (このIDを非表示/違反報告)
神崎セルザ@新垢2(プロフ) - 仁王彩香さん» 1ヶ月程また更新してませんでしたね……!申し訳無いです……!この後の展開を考えていたら少々行き詰まってしまいまして……笑 でも私も早く2人をもっと進展させたいので、また今週から更新再開させますね! (2020年7月5日 19時) (レス) id: 153d28bbbb (このIDを非表示/違反報告)
仁王彩香 - 更新お願いします。゚(゚´Д`゚)゚。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: a3e64590b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神崎セルザ@復帰しました | 作成日時:2019年12月1日 20時