ベランダの恋＿2

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｢……おーい(笑)｣


蓋にしたクッションの下から
北山さんの声がする。



｢………わたし、帰りますね｣



そう言って北山さんの頭から膝を抜こうとするのに、何も見えてない状態の北山さんの手は私の手首を掴んだ。




｢ね、コレどかしてよ｣


そんなの、絶対無理だってば。


｢じゃあ、北山さんが先にどいてください｣

｢Aちゃんがコレどかしてくれたらどく｣

｢無理です、北山さんが先！｣


言い合ってると、クッションの下で
北山さんはくすくすと体を揺らして笑いだす。


観念してくれたのか、
よいしょ、って言いながら起き上がった北山さんは大きなあくびをした。




｢つか、ほんとごめん。
俺がやるとか言ったのに寝ちゃったわ｣

｢いいですよ、全然｣

｢片付けまでしてくれたんだ。ありがと｣

｢や、ほんとに気にしないで下さい｣


さっきまでの膝枕の余韻のせいで
北山さんと目を合わせられらなくて。

返事する一瞬だけ、
北山さんの方を向いてすぐに逸らした。



｢怒ってる？｣


聞いてきた北山さんの声が近かったから
北山さんの方を見たらさっきよりも近くに座り直してる。



｢えっ、怒ってないですよ、まったく｣

｢じゃあなんで目、逸らすの？｣

｢いや、だって、｣



前のめりに近ずいてくる北山さんと
後ろに後ずさりする私。

北山さんの目は逃すことなく私を捕らえてくるから、顔が熱じわじわ熱くなってきてる気がする。




｢恥ずかし？｣


ふふって鼻で笑う北山さんの余裕感。

対して私は、
その返答に縦に首を振ることしかできないし
変な汗までかき始める始末。



｢…膝枕とか、
今までしたことないですから｣


震えちゃいそうな声で答えると、


｢彼氏にも？｣


そう聞いてくるから、うん、と頷く。



｢へー。
Aちゃんて付き合ってない人とは
こういうことしないタイプ？｣



｢こういうこと？って、……








それは、スローモーションで。





北山さんの顔がゆっくり近づいて来たと思ったら、唇にふわっと柔らかいものが触れた。



気が付いた時には、
もうそれは離れていて。








｢こういうこと。｣




そう言った北山さんは、
今度はさっきよりも少しだけ長くキスしてきた。

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